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片桐君のYouTube配信の再生回数がじわじわと伸びている。うちみたいな弱小芸能事務所はコロナで虫の息だ。ライブ、舞台、ショッピングモールのイベントがのきなみ中止で先行きも見えないときている。マネージャーの私もイベントキャンセルの手続きなどの事務仕事に追われているし、配信に関するマネジメントもうちの唯一の稼ぎ頭のシンガーソングライターに関してしか時間が割けずに片桐君のYouTube配信は確認もできていなかった。だが片桐君は一人地道に取り組んでいた。
ファンからのメッセージを読む色恋営業的なものかと思ったら、シェイクスピア劇や有名ドラマのワンシーンを一人芝居で朗読するコーナーがあり、それが地味にウケているようだ。そうだ、片桐君はお芝居が好きだし、彼の芝居は何か惹きつけられるものがある。だからこの仕事を辞められないのだ。
それに気づいた人がいて、事務所に連絡が入った。YouTubeで朗読劇を行うので、片桐君にも参加してほしいと。企画した制作会社の人は片桐君のYouTube配信を見ていて、彼の演技をぜひ披露してほしいとオファーしてきたのだ。もちろん主役は大手事務所の有名俳優だが、脇役でも同じ場に立てるチャンスだ。
彼の演技を見てもらえるこの機会、弱小事務所なりにツテやSNSを駆使して全力でマネジメントしたい。
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