同窓会

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同窓会

「寒っ!」 冷たい風に煽られ思わず声が出た。 今日は一年最後の12月31日。 通常なら冬休みなので家でダラダラ過ごしつつ、気持ち大掃除を手伝い、家族と年越し蕎麦を食べながらバラエティー番組を見つつ、歌合戦を梯子し、カウントダウンからの新年のご挨拶が定番なのだが、今日は夕方から出ている。 年末忙しいだろうが、同窓会をしないか。と電話があったからだ。 ハガキじゃないのが幹事を請負った旭らしい。 彼とは中学からの付き合いだが、思い付きで行動を起こす割には人望厚く気さくなので、この同窓会も年末忙しいにも関わらず、電話の連絡だけでクラスの大半が集まるらしい。 4年ぶりの再会……。 進学した俺は学生生活もあとわずかだ。 指定された居酒屋が見えて来る。 店の前に立っていた男性が俺を見付けて大きく手を振る。 ドキッとした。 ドキドキが加速する。 いやいや、まだ話もしてないし!早いだろ!! 静まれ自分!! 自分に言い聞かせ、一旦足を止める。 すると、男性がこっちに走ってやって来る。 待て!待て待て!!まだ心の準備が!! 「久しぶり!幸喜が一番に来ると思ってたぜ」 不測の事態にも備えられる様に、俺は大抵30分前行動を取っている。 今日の約束も18時半からだが、今はまだ17時50分だ。 「ひ、久しぶり!!!!」 ギリギリ一言挨拶出来た。 が、旭の言葉にまだ他の人は来ていないことを知る。 そりゃそうだ。俺はいつも待たされるより待つ方だ。 だが、旭と一緒になって、早過ぎる事が無くなってたなと今になって気付く。 いや、今はそんな事より、ふ、二人きりって事かよ!! そう思うと、カーッと顔が熱くなる。 「顔真っ赤!!そんなに寒いのかよ」 背の高い旭が近距離に俺の顔を覗き込み大きな手で片頬を包み込む。 「?!」 硬直する俺に 「あ、ごめん…」 と、旭は小さく謝り身を引いた。 「寒いから中に入ってなよ。俺、もう少しここ居るわ」 4年前と変わらない笑顔で優しい言葉を掛けてくれる。 「う、うん。じゃあ……」 まだ顔の赤い俺は旭の前をササッと通過して中に入る。 案内されて通された座敷に上がるとコートを脱いでハァッと脱力する。 たった数分でこれかよ……。俺、最後までもつのかな……。 早くも弱気である。 今日は、旭に伝えないといけない事がある。 これを伝えないと、俺は先に進めない。 俺の心は4年前の春に留まり、帰って来ないのだ。
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