April-1.ひとめぼれ

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April-1.ひとめぼれ

「──!」  まるで時間が止まってしまったみたいだった。  入学して十日目。  この図書室に通い詰めるようになって五日目。  そんな今日、私はついに出会ってしまったのだ。 「……ああ、今日は佐伯くんだったわよね。これから一時間くらい職員会議なんだけど、あとお願いできる?」  司書の辻先生のささやき声が聞こえて、私はふと読んでいた本から顔を上げた。  見ればちょうど、辻先生と入れ替わるようにしてカウンターに入っていく生徒がいる。  二年生か、それとも三年生か──雰囲気からして先輩なのは間違いない。  カウンターに入っていけるということは図書委員なのだろう。
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