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「──あの。すみません」
突然話しかけられ、私はつい体をびくつかせてしまった。
いけない。考え事をしていたせいで手元に開いた本は一行も進んでいなかった。
いや、それよりも人が近づいてきているのに気づかないなんて──と思った瞬間、私は自分の目を疑った。
「えっ、あっ……。佐伯先輩!」
机のわきに立ち、こちらをのぞき込んでいたのは、あの佐伯先輩だった。
名前を呼んでしまってから(しまった……)と内心頭を抱える。
私が一方的に知っているだけで面識はないのだ。佐伯先輩も不思議そうな顔をしている。
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