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けれど佐伯先輩はすぐに優しく微笑んで、カウンター上の時計を指さした。
「そろそろ閉室の時間なんだ。集中してるところを邪魔するのは申し訳ないと思ったんだけど」
佐伯先輩の言葉に愕然とする──閉室時間?
果たしてそれは本当だった。
佐伯先輩の指の先で、時計は五時五十分を指していたのだから。
考え事がはかどるわけだ。
「えっ、ほんとだ! すいませんすぐに片付けます!」
慌てて立ち上がったせいで、視界がぐらりと揺れた。立ち眩みだ。
(あ、やばい)と思った時にはもう遅い。
体が傾くのを感じ、とりあえず何かにつかまらなくてはと伸ばした手が空を掴んだ時だった。
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