2人が本棚に入れています
本棚に追加
ホラーゲーム実況動画を始めました
高校2年生になったばかりの春。そしてゲーム実況者になって2年目を迎えた節目。
まだ不慣れな新しい教室で、僕こと鈴木優太は、授業の合間の休憩時間に、次はどんなジャンルのゲームをしようか悩んでいた。今までロールプレイングゲーム(RPG)の実況動画を作って、動画サイトに上げていたが、PV数が全然伸びない。すぐ夢中になって全然実況しない動画になってしまうからだ。次こそはちゃんと実況して、多くの人に楽しんでもらえる動画を作らないと……。
「あたしね、ホラーゲームの実況をよく見るの」
ふと耳に入ってきた明るい女子の声。視線が前方へ吸い寄せられる。僕の席から机2つ分離れたところに、3人の女子が集まって雑談をしていた。そのうちの1人に、僕の目が止まる。
橘穂乃花さん。僕と同じ17歳。いや当たり前の事なんだけど、そう意識しないと同い年に思えないからだ。女優みたいに整った顔立ち。体型は漫画雑誌の表紙を飾るグラビアアイドルに引けを取らない。その美貌は校内一番との噂があるくらいだ。
「うん。『♡ いいね』したりもするよ。あっ! 大好きな動画にはコメントもしたりするする。『ホノハナ』ってあるでしょ? これ私」
橘さんが友達にスマホを見せる。とても楽し気で、肩まで伸びたマロン色の艶やかな髪が愛らしく揺れる。
……、次のゲーム実況、ホラー系にしようかな。でも、苦手なんだよなぁ……。でも頑張ればどうにかなるだろ。てか橘さん、ユーザー名『ホノハナ』なんだ。穂乃花だからホノハナ。可愛い……。もし『♡ 良いね』なんかもらえたら……、って何を考えている!? 動機が不純すぎるだろッ!
でも結局僕は、ホラーゲーム実況動画を作って、動画サイトに上げるのだった。その出来栄えはひどいに尽きる。不気味なゴーストなどが出るたびに、大声で悲鳴を上げるわ、慌てて武器の拳銃を撃ちまくるわ、弾が無くなってひたすら逃げるわ、最後はゲームオーバーになるという。物語が少しずつしか進まない。怖がりの性格が災いして少しずつしか上手くならない。そんな動画にPV数は伸びるわけがなく。はあ~……、絶対に橘さん見に来ないよな。どうしよう、まあせっかくだしクリアするまで頑張るか……。
そしてホラーゲーム実況動画を投稿し続けて1ヶ月を過ぎた頃。大事件が起こってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!