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官舎で荷ほどきをした後、ハイシロは洞窟の小人たちの住まう村へと挨拶に行った。小人の長老と呪術師に祭りへの参加を確認するためだ。
フレアの魔除けを作ってもらう際、小人の長老から、近々の再訪を予言されて何のことかと思っていたが、思いの外早く実現されてしまい驚く他はない。
小人の村は南に面した大きな岩の窪みの、そのまた更に奥まったところに開口部のある洞窟の中にあった。
小人たちはハイシロの腰くらいの背丈しかない全身モフモフした毛でおおわれた精霊だ。毛の色は茶だったり黒だったり灰色だったりと様々だが、歳をふると大概白っぽくなるのはニンゲンと同じだった。
分厚い肉球のような皮で覆われた手は意外に器用で、藁やヘザーを編みこんで芸術レベルの細工をするのを得意とする。
ハイシロは洞窟の中に足を踏み入れると、鈴をならして来訪を伝えた。ややもすると正面の重い木の扉が開かれ、中から真っ黒なつぶらな瞳をもつ赤茶色の小人が現れた。
「ハイシロ様、お待ちしていました」
小人は嬉しそうな声を上げた。長老の世話係をしているリードという青年だった。
洞窟の中は空気の通り道も考慮しているので思いの外天井が高い。ハイシロは簡単な挨拶をすると、リードの後に続いた。中は、薄暗い上に入り組んでいるので小人の案内が無ければ確実に迷う。
「この時期にお見えになるということは、長老様の予見は当たったというところですね。フレア様の一件も目途が付き、ツキシロ様も収まるところに収まったというところで、いよいよです」
先を行くリードは、スキップでも始めそうな足取りだ。
「ツキシロは……ここに来たことは無かったはずだけど?」
「『白き者』から全てを聞き及んでおります。月満ちたというところでしょうか」
こちらは好奇心に突き動かされた思い付きの行動だったはずなのに、これは「縁」というよりも……、誰かの計画通り? なのか? ハイシロは微妙な居心地の悪さも感じながらリードの背中を見つめた。
突き当りの白茶けた古い扉に行きつくころには、洞窟内は大分温かくなっていた。ハイシロは分厚い皮のコートを脱いで抱えた。
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