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 色と言えば真っ赤な彼岸花が道標の田舎道に入ると、タイヤがジャリっと石の反発を食らい車体が跳ねた。    山間にはポツポツと離れて民家の屋根が点在している。  限界集落というべき人気の無さだ。  外灯とて無く、闇の帳が下りれば漆黒の檻に囚われるだろう。  しかし晴れた水色の空には鱗雲が掛かり、 陰りを帯びた山岳を除けば長閑な情景とも言えようか。  百年過去に遡ったような風景。    旅の友としてきたカーテレビを消し、タバコを咥えると火を点けて深く吸った。  巨大な黒い手が靄々と伸びて、山が自分を呼んでいるように思えた。  
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