冷たい彼と私

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「え?」 「歩け。こんな所で座り込むと迷惑だろう。僕は急ぐ。家に着くまで君にかまける時間は無い」 「……はぃ?」 「歩け。予定時刻を7分も過ぎている……温かいものでも出そう」 見上げた彼は黒縁メガネを掛け直しながらまた背中を向けた。 そろりと立ち上がり先を急ぐ彼の後を追う。 白く吐き出される息が流れて消える。 初めて訪れた彼の家では、彼の帰りを待ち遠しくしていた小さな兄弟がいた。 入れ違いに出掛ける彼の母親に「よろしくね」と挨拶をされ、会釈を交わして上がったリビングでココアを貰った。 母子家庭の彼は自分の時間を家族のために使っている。 その中に私への時間が盛り込まれ、一員となるのはまだ少し先の話。 〜fin〜
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