21人が本棚に入れています
本棚に追加
冷たい彼と私
「時間だ」
そう言って彼は私の隣を抜けた。
「え?……ぇ、ええっ?!」
慌てた私は彼の背中へ振り返り「ちょっ、ちょっと待って?!」と声を上擦らせてその後を追い掛けた。
「あの、山内くん、待って。わた、私、まだ何も……」
「僕は急ぐ。君が10分くれと言うから時間を与えた」
「そ、そうだけど」
「その10分、君が発したのは『あの』『あのね』『その』『えっと』の繰り返しだったな」
「あ……いや、その、そうなんだけど……」
男の歩幅と女の歩幅に違いはあるだろうけど、共に歩いているのならその速度を揃えてくれる気遣いがあっていいと思う。
が、彼[山内]くんはそれすらも惜しいのか、かなり急ぎ足でザカザカと校門を抜け、歩道を行き、200m先のバス停まで真っ直ぐ向かう。
最初のコメントを投稿しよう!