冷たい彼と私

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思い描いていたものと違う。 それでも何ヶ月も溜めて、溜め込んできたんだから。 やっと伝えようって決心したんだから。 恥ずかしさと情けなさでぷるぷると拳が揺れる。 彼はそれと分かるように大きく全身で息を吐いた。 (泣きそう……) 「早くしないと降りるぞ」 彼の表情筋はきっと張りまくってるんだ。 全然私の事なんか気遣ってくれない。 なのに……なんで…… 「……なんで」 「は?」 「なんで、そんなに冷たいのよ」 「……」 「ただ、ただ“好き“だって伝えたかっただけなのに、なんでそんな冷たい態度とるのよ?!」 涙は堪えた。 感情に乏しくほとんど笑わなくて、成績は常に学年上位。 運動は得意じゃないみたいだけど、毎日決まった時間を過ごす几帳面な山内くんは、男女隔てなく接する優等生。 同じクラスになってもう直ぐ一年。 離れ離れになる前にどうしても伝えたくて一大決心したのに、最悪だ。 周りが固唾を飲んで成り行きを伺っている。 「___そうか」 たった一言で終わった。
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