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手始めに女子が好きそうなデザインの雑貨屋さんに入り、買うわけではないのにいろいろな商品を見ている福本さんの後ろでなんとも気まずい。周りは女子、女子、女子。見ている分には女子は好きだが、周りに男子が、いないので浮いている気がして気まずい。しかし、そんな俺の気持ちを察することなくマイペースに商品を見る福本さんに癒されている自分がいた。福本さんは明るくて何より一緒にいると楽しいな。
その後もお店を三件ハシゴして、ボーリング、ゲーセンといろいろと見て周り、最終的にカラオケにたどり着いた。
「よし、歌うよ!」
「おおー」
福本さんがマイクを素早く取ると、曲をリクエストする。たまたまなのか俺も大好きな曲だったので音楽趣味があったことが少し嬉しかった。
福本さんの歌は、超上手くて透き通るような声で俺の心を癒してくれた。
こんなに上手いととても歌いにくい。けど、いいんだ、今は二人しかいないんだから。
歌った結果、福本さんに笑われることはなかったのに安心すると共に大声を出すことが出来て気持ちがスッキリする。
しばらく交互に歌いあい福本さんがバラード曲を歌っている時だった。
その曲は突然友達たちに裏切らて全てを失った
人が、題材のドラマの主題歌で俺も見ていた。その時は友達や知り合いに裏切られるわけないだろうと思っていた。しかし、俺は今日陸上部員に裏切られ、失った。
今まで楽しかったのに急に悲しみが押し寄せてくる。
学校では平気だったのに、ヤバい泣きそう。
思わず俺は席を立ち部屋を出ようとすると、後ろから福本さんに抱きつかれた。驚きながらも口を開くと涙が出そうな所まで来ていたので言葉が出ない。
「大丈夫だよ。ここなら誰も他に聞いてないから。」
「お、俺陸上部辞めたんだ。」
「うん。」
「今までキャプテンとして俺なりにみんなのために頑張ってきたつもりだったんだけど、ダメだった。」
「うん。」
「後輩には嘘泣きまでされてさ、他の部員には信じてもらえず、俺の思いは届かなかったみたい。」
「うん。」
「でも、まとめ役だからどんな形であれ、この後もみんなをまとめる責任があって、今ここで辞めるのは無責任だと思ったんだけど・・」
「うん。」
「でも、どうしても続ける気にはなれなくて辞めちゃった。」
「うん。」
「後輩泣かせて部から逃げて最低な無責任やろうでしょ。」
背中から福本さんが離れていくのがわかる。やっぱり幻滅したよね。最低なやろうだと軽蔑されたのかも知れない。仕方ない。俺の思いなんて誰にも届かないよ。
そう思っていると、福本さんは俺の正面へと移動しており、おもいっきり頭を撫でてくれた。
「そんなことない、日下くんはまとめ役としてよく頑張ったよ。みんなの為によく頑張った。だから今部から離れたことは無責任なんかじゃない。今まで頑張ってきたんだから少し肩の荷を下ろすだけだよ。それを逃げたとはアタシは言われないと思う。これからはみんなのためにじゃなくて自分のために行動すればいいんだよ」
頭を撫で終わると真っ直ぐ俺を見つめた福本さんはそのまま俺を抱き締める。
「お疲れ様。優作くん。アタシの前では無理しないで、泣いてもいいんだよ。」
「うわっーーなんで、なんで・・俺頑張ったのに・・なんで・・」
福本さんのその言葉の後、涙が止まらなかった。今まで気丈に振る舞っていたが、やっぱり辛い。どんどん部を辞めた時の出来事や今までまとめ役として自分なりに頑張ってきたことがフラッシュバックして、言葉にならない声を涙とともに出していた。
それを福本さんは何も言わずに抱きしめたまま受け止めてくれた。俺の涙が落ち着くまでずっと何も言わずに優しく抱きしめたままでいてくれた。
いつの間にか俺も福本さんを抱き締めていた。今日福本さんと一緒に居られて本当に良かった。海人や他の友達にも流石にここまで気持ちを出すことは出来なかったと思う。福本さんとに出会えて良かったよ。福本さんが海人を好きなのは知ってる。知ってるけど・・
「福本さん、好きです。俺と付き合って下さい。」
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