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俺の思いを聞いてどう思ったのなかは分からないが、福本さんは何も言わずにもう少し俺を抱き締めてくれた。
「帰ろっか。」
福本さんは優しく微笑みながら、そう言うとカバンを掴んで二人でお店を出て帰宅した。
俺の告白の返事は?と思ったのだが、それを聞くのは無粋というものだ。
福本さんが海人のことを好きなのは知ってるじゃないか。この状況で俺に追い討ちをかけるように告白を断ることが出来なかったのだろう。だから福本さんの優しさで何も言わないんだ。
やっぱりフラれちゃったか。
次の日
俺は図書館に来ていた。今まで陸上しかしてこなかったので、何か新しい部活か趣味でもはじめようかと思い、本を物色している。
いっそ、今度は文化系の部活にしようかな。将棋と囲碁という本を読んでみるもよく分からない。
これは違うな。
草木でも育てるか。今度は園芸部なんてどうだろう。本を読み興味がそそられるも、俺虫苦手だわ。
やっぱり運動系かな。けどなんかまだ運動系に入る気分にはなれないな。
はぁ~何かないかな~
何かやりたいことも決まらないまま図書館に通って数日後の放課後
何もやりたいことが決まらねぇし、久しぶりに美沙紀さんの所にでも行ってみるか。
「美沙紀さん、いる?」
「えーん。」
「どうしたの?いったいなにがあったの?」
入るなり美沙紀さんが机にうずくまって泣いている。慌てて駆け寄って事情を聞く。
「あん・・」
「えっ?なに?よく聞こえない。美沙紀さんを泣かせるなんて許さねぇ。」
美沙紀さんにはいろいろとお世話になっている。そんな人を泣かしたやつがいるなんてとてもじゃないが許さない。拳に力が入る。
「あんたが来なかったからよ。」
「俺?ぐはぁ」
突然顔を上げて立ち上がった美沙紀さんが俺の顔を思いっきり殴る。
意味がわかんない。なんで俺殴られた?
「すぐに帰ったと思ったらその後、全然来なくて・・もう来ないかと思ったじゃないの。」
あーあの時ね。
すぐに帰ったと聞いてピンときた。
「そんなこと気にしてたんですか?意外にセンチメンタルですね。来なくなるわけないじゃないですか。」
「あっそ。ならいいわ。空見てこよ。」
「えっ、切り替え早くないですか?ちょっと待って下さいよ」
俺の言葉を聞いて安心したのか、最初から俺で遊んでたのかわからないが、美沙紀さんは屋上へと向かっていった。
本当にこの人の考えていることは分かんないわ。超マイペース過ぎるでしょ。
「やっぱり気になるの?」
「別にそんなんじゃないですよ。」
屋上から陸上部の練習を見ていた俺に美沙紀さんは望遠鏡で空を見ながら話しかけてくる。
つい目が行ってしまったがまぁあんまり未練はないかな。きれいな辞め方だったとは思わないけどいいきっかけだったよ。
「あの子孤立してるわよ。今では細川くんが話しかけるぐらいみたい。」
「あの子?」
「あなたが嘘泣きさせた子よ。」
「あ~麻衣子か。」
「気になる?」
「別に。もうアイツは俺の知り合いってぐらいの関係ですからね。陸上部のことは陸上部でなんとかするでしょ。」
「それもそうね。それにあの子がまいた種だし、何かあっても自業自得ね。」
そう言いつつも俺は走る麻衣子を上から見る。走り方のフォームが悪化しており、全然進歩してない。むしろこの数日で退化してるぐらいだ。
って思いながらも俺はもう部外者だ。
俺は麻衣子から目を反らすと空を見上げる。
毎日空を眺めるのもいいかもな。
「美沙紀さん、俺を天文部に入れて下さいよ。」
「イヤ。」
即答で拒否された。まさかの即答に言葉を失う。
「あなたにはもっと相応しい場所があるハズよ。休憩でここに寄るのはいいけど、ここで腰を落ち着かせてはダメ。」
ん~なんか意味深で、深いことを言っておられる美沙紀さんの言葉に負けて入部は諦めるか。
「やることないなら、バンドでもやったら?」
「なんでバンド?」
「モテそうじゃない」
確かにモテるかモテないか、それはやる気を出す上でとても重要なポイントではあるが、今俺には好きな人がいる。だからそこまで重要でもないかな。
「別にモテなくてもいいですよ。」
「あら、好きな子でも出来たのね。三角関係とはヤバいわー」
「なんで、三角関係前提なんですか。」
「だって好きな子って、この間言ってたクラスメートでしよ?」
流石に鋭い。まさか言い当てられるとは。確かに三角関係になるのか。けど、多分大丈夫だ。
「けど、バチバチの三角関係にはならないですよ。俺の片思いですからね。それに俺は二人の恋を応援してますから」
「その二人はあなたが思ってるような関係なのかしらね。」
「どういう意味ですか?」
「別に。他人の思いや考えてることはなかなか理解出来ないものってことよ。」
今日の美沙紀さんはなんだかいつもと違って良いこと風な事をよく言うな。なんかあったのかな?
その後、しばらく空を眺めながら美沙紀さんと雑談し、帰宅した。
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