新たな一歩

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放課後 俺は天文部に来ていた。部室に入るも誰もいない。 ってことは上か。 「美沙紀さん。」 屋上に上がるといつものように望遠鏡で空を見ている美沙紀さんを見つけた。 「あ~太郎か。」 「優作ですよ。全然名前違いますよ。てきとうに言い過ぎでしょ。」 「で、今日はなんの用だ?」 「なんかその言い方だと毎回用がないと来ないみたいな言い方じゃないですか。」 「用がないと来ないだろう。」 思い返してみても、確かにここにくるのは何か相談事があるときぐらいでなんの用もなく遊びに来たときはないな。 「まあ確かに否定は出来ませね。」 「今日は人と会う約束があってな手短に頼む。」 人と会う。この人が。こんなずっと空を眺めてる人間はいったい誰と会うんだ。気になる。 「誰と会うんですか?彼氏?ってんなことはありえないか。美沙紀さんに俺以外で会う人が居るなんて意外ですわ」 「失礼だな。」 「俺も会ってみていいですか?美沙紀さんと会うって言う変わり者がどんな人か気になるんですけど。」 「失礼だな。さっさと用件言って帰れ」 望遠鏡で空を覗きながら、ちょっと怒ったように言う美沙紀さんを見て、なんかイタズラが成功したような感じがして、笑ってしまう。 「美沙紀さん、俺と一緒にバンドやりましょうよ。」 「却下、帰れ。」 「なんか冷たくねぇですか。もうちょっと断り方ってもんがあるでしょ。」 「丁重にお断り致します。」 「なんでですか?星ばっかり見てる変人の美沙紀さんでもモテるチャンスなんですよ。」 「却下。」 「クラスで孤立している美沙紀さんがみんなと話せるようになるチャンスなんですよ。」 「却下。」 「そもそも最初にやれって言ったの美沙紀さんですよ。」 「却下。」 くそー空ばっか見てる変人女め、こっちも向かずに望遠鏡覗きながらずっと却下ばっかり言ってやがる。手強い。よし、少し誘い方を変えてみよう。 「さては楽器引けないとか?大丈夫誰だって最初は素人です。」 俺も引けないけど。 「ドラムは叩けます。」 マジか。意外だ。なんでドラム?まぁいっか。これでますます手放せない。楽器引ける人間は貴重だ。 「美沙紀、やれよ。」 俺様キャラで上から誘うのはどうだ。 おっ、美沙紀さんが望遠鏡から目を離してこちらに向かってくる。土下座とかして入れて下さいとか言うのか。 「呼び捨てにしてんじゃないわよ」 バチン。 強烈なビンタが俺の頬を的確に捉えた。 痛い、この女手強い。打つ手なしだ。どうする。 「あれ?なんでミサ姉が日下くんと一緒に居るの?」 「福本さん?なんでここに?」 「日下くんこそなんで?」
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