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放課後
「屋上に来れる場所があったなんて知らなかったなぁ。なんで隠してたんだよ。」
「別に隠してたわけじゃねぇよ。」
俺と海人、福本さんは三人で天文部を訪れて屋上へと向かっていた。海人に美沙紀さんを紹介するためだ。
屋上へと上がると案の定美沙紀さんは空を眺めていた。
一度星見えるのかと聞いた事があるのだが、星だけじゃなくて空を眺めるのが好きだということで、星が見えるかどうかは重要ではないらしい。
「美沙紀さん、海人連れてきたよ。」
こちらに気付いた美沙紀さんは望遠鏡から目を離してこちらに歩み寄ってくる。
「知ってると思うけど、こちら細川海人。」
「どうも、細川です。」
「海里と紹介人Aと紹介された人Bか」
いつも通りの美沙紀さんの対応ではあるが、初対面の海人は少し戸惑っている。けど、美沙紀さんの方も人見知りなのか少し動きがぎこちなくて面白い。それに福本さんも気づいているようで、少し笑っている。
「こちら美沙紀さん。ちょっと変わってるけど、悪い人ではないよ。ちなみに名前はいつも適当だから気にしないで。」
紹介された人Bと言われて戸惑う海人に一応フォローを入れておく。
一つ咳払いをして仕切り直すように海人が一枚の紙を取り出す。
「一応決めないといけないことを書き出してみたんだけど、どうかな?」
海人の出された紙を三人で見る。
1代表者
2楽器調達
3練習場所
4グループ名
5発表曲
6担当決め
確かに文化祭のフェスに参加するにあたって代表者は確かにいるよな。
後のことも確かに必要な項目だな。
「代表者は一応発案者である俺がなろうと思うんだけどいいかな?」
率先して代表者という面倒なポジションに入るなんて流石元キャプテン。当然俺も含めた三人から反対意見は出ない。
「次は問題の楽器調達なんだけど、悩んでるだよね。」
「そもそも、何の楽器が必要なんだ?」
「ギターとベースとドラムとキーボードは必要かと思ってる。」
「紹介された人B、楽器なら私があたってみるよ。知り合いがいるから。」
「ホントですか、美沙紀さん。ありがとうございます。」
まさかの美沙紀さんからの救いの一言。確かに楽器って高いから簡単に買えないし、学校の備品は基本的に貸し出しNGだから、けっこうこのハードルを越えられなくて出場を辞退する人も多い。
にしても、美沙紀さんの知り合いか。気になるな。きっと変わった人なんだろうけど、誰だろう。福本さんを見ると、誰だか見当がついてるようで、納得した顔をしている。流石幼なじみ。けどここで、美沙紀さんの知り合いが気になりますなんて、聞くとまずいよね。やめとこ。
「次に練習場所だね。けっこう学校でめぼしい場所は既に抑えられてて困ってる。」
「ここでやればいいじゃん。美沙紀さん以外どうせ誰もこないでしょ?」
「はっ?お前バカか。私の憩いの場を練習場所に・・まさかここまで計算してたな。」
「大・正・解」
うろたえる美沙紀さんがハッと気付いた顔をしたので、俺はニッコリと笑ってあげた。
美沙紀さんと一緒にやりたいのはホントだけど、今後は練習場所がネックになるのはわかってたからな。
「グループ名についてなにかいい案らあるかな?」
「星に関連する名前にしようよ。」
「なんで?」
「美沙紀さん、星好きだから。」
「おお、ユーサック遂に星の凄さがわかってくれたのか。」
「アタシは反対。ミサ姉が好きって理由が気に入らない。」
まさか福本さんに反対されるとは。
珍しく福本さんはご機嫌斜めな顔をしている。
ちゃんと理由話すか。
「美沙紀さんが好きってのは後からつけた理由だよ。最初から星に関連する名前にしようと思ってたんだ。」
美沙紀さんが好きと言った辺りは凄い不機嫌さが増したが、俺の話をしっかり聞いてはくれている。ホント、なんで怒ってるんだ?なんか美沙紀さんについてのこと言うと怒るんだよな。
「俺らは天文部に全員が集まった。昔の俺は今の状態になるなんて予想出来ないよ。だから最初に四人が集まった場所にゆかりのある名前にしたかったんだよ。」
何故か福本さんは突然ふさぎこんでからため息をつきながら、顔を上げた。
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