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「まさか噂信じてないよね?」
昼休み俺の元に来た福本さんの第一声だった。
ん?どういうことだ。噂・・噂・・?
「アタシ、海人くんと付き合ってないからね。」
あーその噂か。
待て、噂だったのか。ってきり真実なのかと思った。いや、けど真実っぽい噂だよな。火のないところになんとやら。別に隠さなくてもいいのに。あっ、でも教えてくれてれば昨日誘わなかったんだけどな。流石に友達の彼女と二人で一緒には帰れないよ。
福本さんは俺が全く信じてないのを察したのか少し強めの口調になる。
「信じてないでしょ。昨日あの後一緒に帰ってるのをたまたまクラスの誰かに見られて噂が広まっただけだよ。ほら、海人くん人気者だから」
確かにアイツは陸上部辞めた後もイケメンで人気者だからな。
けどな、二人の気持ちを考えるとな。他の女子たちがどう思ってるのか知らないけど、俺はお似合いだと思うんだけどな。
「日下くんだって、ミサ姉と二人で帰ってるじゃない」
「まあ帰ってるけど、美沙紀さんとはただの友達だからな」
「日下くんはそう思ってても、回りからみたら付き合ってるように見えるんだよ。今までだってよく二人で一緒に居たんでしょ。あなたたちの方が付き合ってるんじゃないの?」
なんかやけにヒートアップする福本さんはどんどん怒ってるように俺に言ってくるので、なんかこっちも少しイライラしてくる。
「なんでそうなるんだよ。だから友達だって言ってるだろ。」
俺も少し強く言い返すも福本さんは全く怯んでいる様子はない。二人の間には微妙な空気が流れ出した時、海人が現れた。
「席にいて良かったよ。」
「ほら、彼氏が迎えにきたぞ。」
「だから彼氏じゃないって。」
俺がニヤニヤ笑って言うと、机を強く叩いて反論する。
「なに二人で夫婦喧嘩してんだよ。」
海人が冷静に俺ら二人を見る。
「夫婦じゃねぇし。ってかお前の嫁だろ。」
「あ~噂が原因で揉めてんのか。まだ付き合ってないよ。」
「そうなんだぁ」
まぁ海人がそう言うならそうなんだろう。やっぱり噂は所詮噂か。イライラが急に冷めていく。
安心したという思いも正直あるが、福本さんの恋がまだ実っていないというのも可哀想な気もするな。
「なんで海人くんの言葉はすぐに信じるのよ。この野郎」
「この野郎ってなんだよ、この野郎」
「この野郎にこの野郎って言って何が悪いのよ、この野郎。」
その後昼休み終了まで、決着することなく二人で言い争いをしてしまった。
まさか福本さんがこんな頑固だったとわ。意外だったわ。
放課後
「この二人ケンカでもしてるの?」
美沙紀さんは俺たちに会うなり、俺と福本さん
の様子が違うのに気付いて海人に問いかけた。
なんでいつもと違うのバレたのかな。
「なんか、噂が原因で昼休みからケンカしてるんですよ。」
「くだらないわね。カイトン、さっさと要件を言いなさい。なんでわざわざこんな所に来たの?」
「カイトンって俺の事ですか?」
「他に誰がいるのよ。」
「はじめてそう呼ばれましたよ。」
「だからなに?今日なんだか水とんが食べたいのよ。」
あだ名で呼ばれたのが海人は、嬉しかったみたいだげど理由を聞いて少し複雑な顔をしている。
美沙紀さん、理由言わなくても良かったんじゃないの。
「今日カラオケに来たのはですね、歌うためです。」
「あんたバカなの?カラオケに来たんだからそんなの当たり前でしょ。」
なんか随分俺たちの時より口調が強いな。美沙紀さん海人のこと嫌いなのか?
俺たちは現在海人の声かけの元、カラオケに来ていた。
「楽器の担当を決める為に、歌ってボーカルと楽曲を決めようと思います。」
なるほど。確かにボーカルはまだ誰かも決まってなかったな。いいアイデアだな。歌って決めるなんて。まあ海人も福本さんも上手いから俺はないだろうけど、美沙紀さんの歌声が気になる。
「イヤよ、私は歌わないわ。ボーカルの為だけなら勝手に歌ってちゃうだい。」
腕を組み少し怒るように俺たちを見る。
どうしたんだろ?なんでこんなに機嫌が悪いんだ?
美沙紀さんの機嫌の悪さに少し海人も困惑している。
「ミサ姉って音痴なんだよ。だからさっきから不機嫌なの。」
「あ~なるほどね」
だから機嫌が悪かったのか。謎は全て解けた。
「音痴だったら悪いの?生きていくには困らないわよ。」
「誰も悪いなんて言ってないでしょ。そんなに怒らないの」
福本さんが尖っている美沙紀さんを優しくなだめる。
そして、矛先が突然俺に向いてくる。
「なによ?何か文句があるなら言ってみなさいよ。音痴なめんなよ。」
「何も言ってないじゃないですか。別に文句なんてないですよ。俺だってそんな上手くないですし。」
「うるさい、噂一つで女とケンカするような奴に慰められたくはないわよ。」
えぇ、酷くない?俺なんも言ってないじゃん。なんでこんなに言われるの?
ここで三人の共通認識が芽生える。
美沙紀さんに音痴は禁句だ。
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