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「はぁ~」
伊瀬と麻衣子が被服室から去った後、深くため息を吐く。
はたしてさっきの指摘の仕方は正解だったのだろうか?
麻衣子のケガに気付いた時点で指摘しないわけにはいかないのだが、なんかもう少し配慮してやるべきだったんだろうな。
せめて彼女が泣かなくてもいいような、言い回しを考えるべきだったな。
「指導者って難しいな。」
ため息を吐きながら机に寝そべった。
けど、落ち込んでる時間はない。明日から麻衣子に別メニューをさせないといけないのだから、メニュー考えなきゃ。
足に負担のかからない練習か。ってことは腹筋や背筋のような体幹トレーニングが中心になるな。
ネットで探したり、練習ノートを見返しながら
いろんな姿勢で腹筋を行い、最もよさそうなのを選別する。
ブーブー
練習メニューの検討に奮闘しているいとスマホが震えたので、確認する。福本さんからだ。
『お菓子作ってみました。正門来れる?』
時計を見ると集会から既に一時間以上過ぎていた。すっかり日が傾きだしている。
そろそろ帰るかな。
『了解。』
荷物を持って戸締まりをしてから俺は海人を迎えにグラウンドへと向かった。
グラウンドには既に陸上部の姿はなかった。
もう練習も終わったみたいだ。
部室も見てみるもいない。
仕方ない、とりあえず正門行ってみるか。
正門には二人の人影が何か楽しそうに話している。
海人たちか?俺はなんとなく気づかれないようにこっそりと近づく。
やはりそうだ、海人と福本さんだ。
楽しそうに二人で話している。福本さんの手にある紙袋の中にお菓子が入ってるんだな。
よし、俺も合流するか。
ん、けど待てよ。俺が居ない方が二人の為なのでは?
福本さんは眺めているだけだった海人と二人で話が出来ている。海人も気を使っている感じもなく、楽しそうだ。
ならわざわざ俺が行って空気を壊すこともないか。
『ごめん、俺まだやることあるから今日は無理そう。』
スマホで送信すると、再び俺は学校の中へ
さて、どこに行こうか。部室も被服室ももう閉まってるしな。
そうだ、あそこに行こう。多分居るだろう。
特別棟四階の一番端っこ。教室には天文部と書かれている。
「おじゃましまーす。」
入るも誰も居ない。ってことはこっちか。
教室の奥へと進むとベランダへの入り口があるのだ。そしてそこに出ると屋上へと続く梯子がある。
屋上へは本来行ってはいけない、行けないのだが、これは代々天文部が継承している、秘密でこの梯子を使えば屋上へと出れるのだ。
俺は昼休みや困った時によくここへ来るので慣れたように梯子を登り、屋上へと出る。屋上には人影がある。
「いたいた、美沙紀さん」
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