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「そいつはかみさんに巻き付いていた綱とおんなじもんだ。酷な言葉をかけられるたんびに、増えて肉に棘を刺す。そこから滲み出す毒の痛みは、そうそう耐えられるもんじゃねぇ」
無いはずの全身を、灼熱の蟲が這い、焼く。
死神の暴言が尽きるまで、この壮絶な痛みをどのくらい味わわされるのか。
もがくことも、意識を失うこともできず、私はひたすら時が経つのを待つしかなかった。
死神の口が、にぃと広がる。
鎌の先に球を引っ掛けずぶりと遺体に押し込むと、
「詫びろ」
鎌の柄で、肉体に戻った私の背を突き、元妻の前に引っ立てる。
「今のがてめぇが数十年かけてかみさんに与えた、痛みと苦しみだ」
私は生まれて初めて土下座をさせられた。
かつて味わったことのない、屈辱だった。
―ごぉぉん‥‥‥死神が、鎌の柄で地を突く。
「なるほどな」
私の遺体が折れ曲がり、中から球が弾け飛ぶ。
「もうてめぇは救えねぇ」
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