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やっぱり、会っちゃいけなかった。
頭のなかが彼でいっぱい。身体中がもう、彼しかいらないって叫んでる。まぼろしだったらいいのにそうじゃないことくらいは自分で理解できるの。
孤独な人。
誰のことも望んでなかった人。
傷つけて傷ついて、そうやってでしか生きられなかった人。
そんな人が、一緒にって言うの。
お母さんの絵を見に行った時も、海を渡って思い出の島に行った時も、死のうとした時も。
だからわたしは一緒に帰ってきたかった。
あの人しか考えられない。
そんな気持ちからまだ逃げようとして、こんな優しいきみに縋ろうとしていた。
「さすがにそれは許さないよ」
そうだよね。
「槙野、見せてよ。中学から続く気持ちを叶える瞬間を。俺が好きだった槙野が幸せを掴むところを。そしたら、俺も報われる気がするから」
滑稽だと思ってたあの頃の姿が、誰かの心に残れたんだ。きみは残してくれたんだ。
「今まで、本当に…ごめんなさい。一緒にいてくれてありがとう。高藪くんといると楽しいことばっかりだった」
「俺も。あんなに甘いって思ったクレープは初めてだった」
彼はため息混じりに笑った。
「晴臣先輩の目醒ましちゃったのはたぶん俺だから、仕方ないよね」
いつかあの人を殴った拳を見ている。
高藪くんが晴臣先輩の名前を呼んだのは、そういえば初めて聞いた。
そう言うと、つまらない意地だったんだよと彼はまた笑った。
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