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晴臣先輩はわたしと再会する2日前に、とうとうお父さんに手をかけたらしい。
凶器はずっとポケットに忍ばせていた刃物ではなく、産んでくれたお母さんの絵画にまとう額だったそう。
それで何度も殴って、首を絞めて、また殴って──── そして、わたしのところへ来た。
晴臣先輩は「槙野は関係ない」「知らないで一緒にいた」「おれがただ無理矢理連れてきただけ。黙って付いてくると思って甘えた」と話しているんだって。
それは本当かと問われ、確かに本当だったけど肯定も否定もできなかった。
むしろ、知っていたような気持ちになってしまって。知ってて一緒にいた気がして。
だって、彼の殺意はもうずっと前から知っていた。
どうしても変わらないものだって、わかっていた。
それでもわたしは罪に問われることなく、3日後には学校にも通えて、何もない日常を取り戻していく。
そんな中で、ニュースで知った晴臣先輩のお父さんが入院している病院に来た。引き止めてきた高藪くんの言うことは聞けなかった。
全校生徒を覚えていると言っていた彼のお父さんはわたしのことも、付いてきた高薮くんのことも未だ記憶されていた。
「あの…。晴臣先輩のことを、どう思ってらっしゃいますか」
日本中が今、この人のことで騒いでいる。子息に殺されそうになった人間だと。
そんな中、わたしたちの面会を許してくれた。
「あいつが辛かったことは承知している」
他人事のような台詞。
「だけどあいつは私の人生の──── 汚点を形にしたに過ぎない」
でもそうじゃない。自分に起きたことを理解しながら、発される冷たい言葉。
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