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高藪くんと別れたこと。晴臣先輩への好き以上の気持ちに気づいてしまったこと。舞菜に言うと「もったいない。…でもまあ、陽花里らしいね」と呆れ顔で言われた。
傷つけた人がたくさんいる。彼にはばかだってまた言われそう。
それでももう…何があっても、好きだと誰かに感じても、揺るがないって思う。
「槙野、巻き込んでごめんね」
意を決して会いに来ると、硝子を隔てて向かい合ったその姿は少し痩せていた。
首を横に振る。巻き込まれたなんて思ってないよ。
「あまり食べてないって聞きました。だめじゃないですか」
「あー…ヤマっしょ。あいつはおれのこと見返したいって言うくせに前から本当に心配してくれてんね」
あ、ちょっとうれしそう。きっとヤマ先輩が見たら泣いて感動すると思う。
「お父さんのこと……なんて言ったらいいかわかりません」
「ぶはは、素直~」
うそ。本当は、残念でしたねって言ってあげたい。
「あいつに刃物向けたんだって?」
う…これもヤマ先輩情報だ。
「なあ槙野。一生ひとりでいいって思ってたけど…どんなおれでも味方でいてくれる人がいるって思うといつも心強かったよ」
何もできなかったのに。
涙が落ちる。拭ってあげれないことを悔やむみたいな顔、しないでよ。
「それならあの頃にわたしのこと受け入れてくれたらよかったのに」
そうしたらずっと一緒にいられる未来があったかもしれない。手錠がかかる姿なんて見なかったかもしれない。この人はこれから、何処に行っちゃうの?
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