オンラインよしこ

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あたしの名はよし子。小学生。 「以下の項目に入力して、登録ボタンを押して下さい」 スマホにきたアドレスをクリックしたら、そんなのが来た。 名前と職業のところにそう入力。家族? えーと。父ちゃんはタクシーの運転手で、母ちゃんはずいぶん前に死んじゃって、三つ子の弟と5人暮らし。 あれっ、住所は入力しなくていいの? ラッキー。ちょうど今家出中で友達のところにいるんだもん。 大体あたし小学生だってのに、弟3人の面倒を見て、父ちゃんと全員分の食事作って家事全部だなんて、普通グレるでしょ。家出して当然でしょ。今泊まらせてもらってる友達って、小学生なのに保護者なしのぜいたくなお屋敷に住んでるの。ないしょだけど魔法使いです。 登録ボタンを押したら、……あれっ、何かごとごと音が……え、スーツの大人の人が画面に出た! 「こんにちは。最後にあなたのお顔とお声を確認いたします。ちなみに私もよしこといいます」 しゃべった!  「画面下にあるマイク、ビデオのマークをタップしてください。そして何かおっしゃってみてください」 はあ。ちょいちょい、と。――あ、画面が分割してスーツの人の隣にあたしが映った。……やだ、今日のおさげ、ちょっと曲がってた。 「あ、こ、こんにちは……」 「はい、こんにちは。――今ので顔認証、声認証できました。ようこそ、『オンラインよしこ』へ」 オンラインよしこ? 「あなたの名前は、よしこ21509です」 「ちょっと待って。あたしの名前は、花――」 「苗字はどうでもいいんです」 「え」 なら、今のダサい名前じゃなくて、……山部よし子。うん、これ、よくない? けど、そのスーツの人は「不要です」とバッサリ切った。 「お名前がよしこ。それだけがこのオンラインに入れる条件ですので」 ……何だ。あたしはしゃがんで床に指で一筆書きをした。相合傘。その下に、よしこ、山部、って並べてみる。 うっとり。あたしいつか山部先生のお嫁さんになるんだもんね。担任の山部先生、カッコイイんだもん。
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