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私の名はよしこ。公務員。
増えるなりすまし。顔出しと声紋だけでオンラインへ登録できるその簡単さが仇になっている。
こんな犯罪まがいの他に、「よしこに改名したい」「他のオンラインから転入したい」などの希望者が殺到。それら想定外の業務に忙殺されて、それまでの業務の効率化には程遠い。
「疑わしきはオンライン登録抹消。再登録には、従来の自治体に出向いて紙の戸籍謄本を取って本人確認書類を揃えた上で再度申請、というシステムにすればいいじゃないか」
「その書類はやはり家族全員同じ苗字に据え置いてよいのでは」
会議ではそんな意見が主流を占めた。
それをやめるためのシステム構築だから。わかってますか、オッサンども。
試行期間はもうすぐ終わる。
結局何年も議論してようやく試行に漕ぎつけたのに、やっぱりここのオッサン連中は隙あらば元に戻りたがる。出てきた課題を潰して前に進むのがまっとうな手順というものじゃないのか。部下にたくさん資料を作らせてたくさん手間暇時間をかけさせて、「やらない」との結論ありきで「やりました」と見せかける体質は大昔から変わらない。
何だったんだろう、私の役割。頑張ってきたここ数年。
「君には別に不都合ないからいいじゃんか、好古良湖ちゃーん。キラキラネームなだけで男なんだから」
……こんな奴らが、名前という大切なものに関わる制度の責任者。こんな、問題意識のかけらもない面々が。
男だから不都合ないって? あんたらみたいな奴から散々不愉快な思いさせられてきたんだ。いや私はともかく、そもそも困っている人の要望を解決していくことが、いつか自分にも返ってくるんじゃないだろうか。ユニバーサルデザインだってバリアフリーだって。
青臭い?
……辞めちゃうか、こんな職場。
知り合ったたくさんのよしこさん達と、個人的に何かを起こした方がよっぽど建設的かもな。
(完)
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