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「あのね」
「うん」
「こんな夜遅くに、急にこんなこと言われて戸惑うかもしれない。だけど、ここ最近ずっと悩んでて、葵ちゃんに聞いてほしいことがあって、……でもこれを言ったら、せっかく仲良くなれたのに葵ちゃんとの関係を壊しちゃいそうで」
冬音はなんだかんだと前置きを言って、なかなか本題に入ろうとしない。
「何、大丈夫だから早く言って。……ここまで来たんなら、全部吐き出して行きなよ」
「……ありがとう。あのね、僕、葵ちゃんのことが好き」
「――え?」
その素っ頓狂な声は制するまでもなく漏れていた。
全くもって、意味が分からない。
冬音が私に、「好き」?
「一緒にいてこんなに楽しくて、リラックスできて、それでいてドキドキする人なんて、葵ちゃんしかいないの。だから、……僕と付き合ってくれませんか」
「ちょ、ちょっと待って、だって冬音、彼女……じゃないんだ、好きな人、いるんでしょ? だから配信もやめるって言って。それに、前に部屋に女の子連れ込んでたじゃない。あんた、平気で二股とかするタイプなの?」
そう言った途端、冬音は目に見えて焦りだした。
「――え? え? 好きな人いるってなんで知って……、しかも配信まで……。あとその女の子についても誤解だから。一回ちょっと説明させて」
配信を聞いていたことがバレてしまったが今はそれどころではない。
やはりこいつ、チャラ男だったかとやや心の壁を作る。しかしこの際、言い訳でもなんでも、聞いてやろうじゃないか。
「いいよ、全部聞いてあげるから、一から話してよ」
「あのね、その女の子って一週間くらい前に見た子でしょ? その子はね――」
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