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冬音と妹のプラーベートに踏み込むつもりはないので、葵は慌てて口を開いた。例の女の子の正体はわかったとして、妹であるならどうしてここ最近葵に冷たかったのか。その謎は解決していない。
ここはいっそのこと、直球で聞いた方が良いだろう。
「最近冷たかったのは、どうして?」
「あぁー、それはね、すごく悩んでたから。隣に住んだっていうご縁で仲良くなれたと思ってたけど、ちょっと踏み込みすぎちゃったかなって。これ以上一緒にいたら、好きって気持ちが抑えられなくなっちゃいそうで。……ただのお隣さんっていう距離感が、葵ちゃんには心地良いのかなって思ってたから」
「ただのお隣さん」、その言葉に、葵と同じく冬音も悩んでいたとは。
葵の納得した表情を見たのか、冬音は静かに目で訴える。「他に聞きたいことはあるのか」と。
葵は、一度深く息を吸い、何秒も掛けて吐き出した。そうして、口を開く。
「冬音、私も、冬音のことが好き。もちろん、ただのお隣さんじゃなくて、一人の男の人として。……だから、私でよければ、ぜひお願いします」
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