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 最初からバレていたということは、 「ねぇ、冬音、私がリスナーだって知って近づいたってこと?」  それは、身バレを恐れる活動者にとって、これ以上にないほどリスクの高い行動。  それもわかっているのか、冬音はギクッと肩を強ばらせた後、やや拗ねたような声を出した。 「……だって、そのキーホルダー、僕が活動始めてから最初に出したグッズなんだもん。そんなに初期の頃から推してくれてた子なんて、それだけで気になるに決まってるじゃん」  仮にも界隈でトップを争うような活動者にもかかわらず、あっさりと好奇心が危機管理の意識に負けてしまう所に葵は呆れた。 「だってって……、あのね、私がもっとアブナイ人だったらどうするつもりだったの!? 半分押しかけるように部屋に入ってきて、不用意に近づいて。顔だって住所だってバレてるんだよ? 何かあってからじゃ遅いんだからさぁ」 「ごめんって。でももう辞めたから大丈夫。それに、リスナーさんだから簡単に落とせるだろうとか考えたわけじゃないんだよ」 「それは、わかってるよ」
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