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ついに一人暮らしかぁ。
やや過保護な親を持ち、社会人になるまでは実家を出てはならないことがやや不満であるとふぅくんはよく話していた。配信をしようにも声の大きさが気になってしまったり、たまにはもっと夜中までみんなとおしゃべりしたいのにできなかったり、とにかく一人暮らしがしたいと愚痴を漏らしていたのは記憶に新しい。そしてついに、ふぅくんのお父さんが転勤になったことをきっかけに、ふぅくんは一人暮らしを始めることになったのだという。
《あー @ah_**** : 一人暮らしおめでとう!》
『わー! みんなありがとう! 新居になったら、家族を気にしないで配信できるから、暇なお昼に急に始めたりするかも! もっとみんなと一緒にいれる時間が増えて嬉しいな。配信環境が整うまでちょっとの期間配信お休みになると思うけど、僕のこと忘れないでね! 他の配信者さんに浮気したら泣くからね!』
どこに引っ越すんだろう。たしかふぅくんの通う大学は都内だったはず。ってことは利便性も考えると引っ越し先も都内かな。そういや、ちょうど私の部屋の隣空いてるっけ。
隣に越してきてくれたら最高なのになぁ。
そんな99.9%あり得ない夢物語を妄想しながら、葵は一日疲れた足を念入りにマッサージした。今日はまだ水曜日、勤務はあと二日も残っている。
口角が上がりっぱなしの約二時間が終わり、時刻は午前零時を回った。
心は幸せで満たされている。
明日の天気を確認して服を選び、歯磨き、スマホの充電、就寝前のお手洗いを終わらせて、葵は一日中恋しかった布団の中に潜り込んだ。
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