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*  翌日は、定時に上がることができた。しかし今日定時上がりができたとて、大好きなふぅくんの配信はない。きっとふぅくんは同じ都内のどこかで、新居での荷ほどきに追われていることだろう。  こんな日は、料理にでも凝ってみるか。  最寄りから自室への帰り道、ここに越してきてからおなじみのスーパーに寄ってかごを持つ。 寒い日が続く冬、野菜たっぷりで温まるのが良いだろう。ダイエットも兼ねて。  そういうわけで野菜コーナーをぐるぐる周りながらいくつかかごにいれ、葵は夕食のメニューはポトフに決定した。  野菜とお菓子が詰め込まれたマイバッグを肩に掛け、アパートの階段を上り二階にある部屋へと帰る。その途中、昨日まで空室であったはずの右隣の部屋に明かりがついているのが見えた。  あれ、誰か引っ越してきたんだ。  もしかして、と淡い期待が胸をかすめるが、すぐさま冷静な脳がその期待を否定する。  季節は二月。引っ越しシーズンまっただ中である。引っ越し日が同じだからといって、隣に推しが引っ越してくる可能性などゼロに等しい。 葵は越してきた隣人には大して興味を示さず、カツカツとヒールを鳴らしながら歩いた
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