1

6/11
前へ
/120ページ
次へ
 野菜を切って鍋に入れ、火にかけてぐつぐつと煮ていると、不意に玄関のチャイムが鳴った。  こんな時間に誰だろう。  訪問者の心当たりはなく、葵はそっとドアスコープから外を覗いた。電気もガスもつけていた状態で居留守が使えないことは明らかだ。詐欺師や不審者が葵の部屋をピンポイントで狙ってくる可能性は高くないように思われたが、仮にも女性の一人暮らしの部屋である。警戒するに越したことはない。  覗いた外に立っていたのは、柔らかな雰囲気を纏った若い男の子だった。若い、とはいっても骨格は十分大人であり、大学生くらいだろうか。  きっと近くにある大学の新入生だろうな。  そう思って葵は、一応チェーンはつけたままにしてドアを開けた。  うわっ! かっこいい……!  ドアスコープ越しではよくわからなかったが、肉眼で見る目の前の男の子は、葵のタイプそのものだった。  焦げ茶色のマッシュの髪に童顔、身長も高い。まさに、イマドキの大学生って感じである。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加