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 やっば、間に合わない!  疲れた体にむち打つように、葵は夜の住宅街を駆ける。  帰ってからお風呂に入って着替え、夕食をとる。その後に待っているはずの私の癒やしの時間。帰宅後の行動から逆算すると、最高の癒やしタイムを迎えるにはギリギリの時間である。  急げっ!  ヒールのついた靴での全力ダッシュはさすがにきつい。靴擦れが起りませんように、とカミサマに願いながらも、葵は足を止めない。  こうなったのも定時直前、会議資料の作成を頼んだ上司のせいである。  あいつめ、残業にさえならなければ絶対間に合ったのに!  心の中で上司を「あいつ」呼ばわりしてしまったことはさておき、唯一の生きる糧である最高の時間に間に合うように、家までのあと100メートル、葵はラストスパートを加えた。
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