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最終話 <幸せは私の手で掴む>
空港で私は悟史のLINEのブロックを外した。
メッセージは相変わらず何もなかった。
搭乗までの待ち時間、私は悟史にメッセージを打った。
「今、モロッコです。
もうすぐ日本に帰ります。
今までごめんなさい、
私、自分の事しか考えてなかった。
悟史がもう二度と私に会いたくないなら二度と連絡しません。
でも、私はまたあなたに会いたい、このまま終わりにしたくない。
悟史ももし同じ気持ちだったら連絡下さい」
そして送信ボタンを押した。
どんな結果でも私は受け止める。
怖いけど……でも、幸せは自分で掴みにいかないといけないから。
窓の外はどこまでも青い空が広がっていた。
その青は最初にこの空港に降り立った時に見た色よりも、
深い青に見えた。
搭乗開始のアナウンスが流れ、
携帯の電源を切ろうとした時に、LINEの着信が鳴った。
悟史からだった。
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*********************
俺はモロッコから戻った後、日本で仕事に就いた。
母親が望む仕事ではなく、自分がやりたいと思った仕事、
カメラマンのアシスタントとして師匠に弟子入りした。
仕事は厳しいけど、毎日充実している。
地下鉄の階段を登りきった先で、大きな看板広告が目に入った。
それは紛れもなく、真っ青な空に白いカモメの群れが舞っている
エッサウィラの風景の広告だった。
<あとがき>
このお話は私がモロッコを旅した時に
経験した事がベースになっています。
(王子はいなかったですが。笑)
現地のモロッコ人ガイドと一緒に旅をする中で、
様々な刺激を受け、発見がありました。
当時40歳を過ぎていましたが、
この歳になっても何かに強烈に感情を揺さぶられる事が
あるのかと思いました。
イスラムの国、モロッコは日本人からすると、
いまいちどんな国かわからない人も多いと思います。
そこは日本人からすると、
「こんな世界があるのか!?」と
カルチャーショックの連続でした。
中でも買い物は商品に定価がなく、
値段交渉して買わないといけません。
値段が決まったものを買う事が当たり前の日本では、
とても戸惑います。
「自分はいくらでなら買いたいのか?」
それを考える所から始まります。
また、うかうかしているとぼったくられるので、
お店の人との駆け引きも頭を使います。
しかし、その事によって
「自分の頭で選んで決断する」ことが鍛えられました。
失敗しても自己責任。
でも多少の失敗なら挽回できる。
それに気づいたら、チャレンジもそんなに怖いことではない。
この旅から戻ってからは、むしろ「ああしなさい」と
枠が決められているものに対して、
息苦しく思うようになりました。
自分の意思で決めて、行動する事は蓋を開けてみたら
自由で軽やかだったのです。
「周りがどう思うか? どう見られるか?」
「周りがこうしてくれない」
視点を周りに合わせて疲れている人が少なくない。
それは裏を返せば周りに期待をして周りを
コントロールしようとしているようなもの。
でも自分以外の事をコントロールするのは至難の技です。
だったら、自分が動けばいい。
とは言え、自分勝手に生きる事を推奨しているわけではありません。
自分はどこまでだったら譲れるのか、譲れないのか。
それを自分で決断する事が、
自分軸を持つとか、自分の足で立つという事だと思います。
そして自分軸が出来上がると、周りを労わる余裕が出て来ます。
周りに愛を与えられるようになった時に、
自分も愛や幸福感に囲まれている事に気がつくでしょう。
今、壁にぶち当たっている方がおられましたら、
どうぞ怖がらずに世界を広げてみて下さい。
それは海外に行くという事だけではなく、
自分の身近にある新しいものや事に目を向ける事です。
一見自分と関係のないような事でも、
ある時「パン!」と答えが降りて来る事があるからです。
そのような内容を私の大好きな「星の王子さま」に絡めて
ロマンチックさをプラスし、物語にしました。
はっきりと答えを明言はしていないのですが、
自立や絆みたいなものをこの物語で
感じ取っていただけましたら幸いです。
それでは、このお話でモロッコに興味を持ってくださる方が
一人でも増えましたら幸いです⭐️
「星の王子と砂漠の井戸」を最後までお読み下さった皆様、
改めてお礼を申し上げます。
読者様は私の救いです。
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