地底湖

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地底湖

 久しぶりに見た地上は、実に懐かしい風景だった。  本当に二千年に近い時間が流れたのかと思う程に……。  荒涼としてあちこち煙った黒い大地。  熱を帯びた硫黄の臭い。  ただ一つ違う点は、誰一人いなかったことだ。  ああ、姉者は全て平らげて元に戻したのだな、と納得した。  ニンゲンに加担したことを、別に咎めたわけではない。  その優しさゆえにいつか壊れてしまうことを憂いたのだ。  ニンゲンは羨ましい。たとえ失敗したとしても大したことにはならない。  たかだかソイツの人生がどうにかなるくらいで終わる。  だが、我々はそうはいかない。  終いにする、それだけでも大仕事だ。  大きな力を持つと、それを頼って近づくものが居る。  そもそも、己の力でどうにもならないモノは、諦めろと思うんだが、そこをどうにかしたいと思うのだろうな。  可能性があるのならば、だって?  他力本願で虫の良いことを言う。  だから、言うことは聞いてやる。  対価はいただく。  責任はとらない。  姉者はそれは非道だと言った。  願いは叶えてやれ、と。  そのために頼りにされているのだから、想いをくんでやれと。  ホントにお優しいことだ。  それだけのことをしてやる義理は無い。  当然争いになったが、姉者の方が優勢だった。  当たり前だ。  誰だって、自分の思い通りにしてくれる都合の良いものに力添えする。  結果は納得できるものだった。  特に誰に対する恨みもへったくれもない。  いずれ破綻したら、その時はその時で、己を頼りにした者どもを巻き添えにして終いにするつもりなのだろう?  姉者に加担した者らに、どれほどの覚悟があったのだか知らないが、とどのつまり、一番始末に負えなかったのは姉者ではなかったのか?  ま、応えてくれるものは今となっては誰一人いないのだが。    結局のところ、何もしないのが一番だ。  だから正直なところ、ほっといて欲しい。  それにしても、このエネルギーの澱みは何だ。  姉者が蓋をした所為か。  気持ち悪い。  頭がおかしくなりそうだ。    ……風に、触れたい。
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