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音楽室に柔らかな音色が響く。
それはまるで優しく俺を何かの
檻から救い出してくれるように
心に沁みた。
目を閉じて演奏する音川さんの姿が夕焼けに
彩られ、眩しいくらいに輝く。
そしてなんだか滲んでいる。
俺は泣いていた…。
なんて素敵なメロディーと音なのだろう。
演奏が終わって、音川さんと目が合う。
音川さんの目にも、光りを反射する
一筋の涙が頬をつたっていた。
彼女は微笑む。
生きてる神だ、なんて思ってしまった。
「あのね近藤くん、私あの日近藤くんと
会って、初めて人を元気付けて、
音の力を知ったの。
だから私は音であなたを
救う。私はあなたのあの掛け声、笑顔が
忘れられない。」
真っ直ぐ俺を見つめるその視線を離さずに
僕が言ったのは
「ありがとう。」
ただ一言。それだけ。
でもそれは僕の人生で1番重みのある
言葉だった筈だ。
「ねえ、見て!」
突然聞こえたその声に再び驚いて
振り向くと、そこには夕暮れの中、
虹がかかっていた。
「これは、俺らを繋ぐ架け橋だ…」
ボソッと俺が呟いく。
音川さんは目を丸くした後、
微笑んだ。
その日俺たちは虹が消えるまでずっと
空を見上げていた。
ーそして次の日から俺の快進撃が始まる。ー
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