19人が本棚に入れています
本棚に追加
その後、みーちゃんと話しながら楽器をしまい終えて、トイレに行くことにした。人混みをプールのようにかき分けながら、トイレに着いた時、私は思わずフェンスから身体を乗り出した。いつのまにか雨が止み、7色の虹がキラキラしながら空にかかっているのを見た。
わぁぁ!!
「「綺麗!」」
誰かと声がハモった。
低くて、芯があって、どこか優しさを感じる声だった。驚いて声のした方を振り向くと、そこにいたのは、汗と雨でびちゃびちゃになった背番号10のキャプテンだった。
お互い目がまん丸!
「さっきの!!」
と、彼が言った。
「あれ?私を知ってるの?」
「さっきソロやってたよね?カスタネットだっけ?すごく元気と勇気をもらったんだ。
本当にありがとな!」
うそ、嬉しい…
あの音が聞こえていただなんて!
「うん!伝わっててよかった。今回の試合は私、大切な事と楽しさを教えてもらったの!!でもね、カスタネットじゃなくて、クラリネット だよ」
そして2人で明るい笑い声を響かせた。
なんだか胸がドキドキする。ワクワクかな。
「俺、近藤凌空(こんどう りく)。よろしくな。」
「うん!私は音川虹葉。」
「あ、そーだ。これあげる。お礼な!」
彼は私の頭にキャップをかぶせてくれた。
そこには、「We are forever 」
ー俺らは永遠ーと書いてあった。
そして明るく白い歯を見せて微笑む彼は、虹の真ん中に立っていて。私には近藤君が太陽の下、眩しい輝きを放っているように見えて目を開けていられなかった。きっとこれが私の一目惚れで初恋。
きっとここから私の中学校生活はきらめき始める。そう思った矢先、私は転校が決まったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!