うちには綺麗なバラがいる

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 数日後、ベッドの横には居場所を取り戻したロゼの姿があった。あの後結局琴乃は家に帰らず、辺りが真っ暗になるまでその場にいた。すると近所の人を何人も連れた両親がやって来て、琴乃を見つけるなり叱るやら泣くやら大騒ぎになったのだ。  そして帰ろうという両親に、ロゼを連れて帰る許可をくれなければ、家に帰ることはない。例え帰ってもまた家を出てやると、威勢よく啖呵をきった。多少は揉めるかと思われたその言葉は、二人の思惑と違いあっさりと受け入れられた。 「お父さんにね、叱られたのよ。友達を作るのは大事なことだけど、そのために宝物を捨てちゃダメだって。ごめんね、琴乃…」  というわけで、ロゼはめでたく琴乃の家に戻ってくることが出来た。そして琴乃は、両親に心配を掛けぬよう人間の友達も作り始めた。そのぶんロゼとの時間は減ってしまったが、それでもロゼは寂しくない。 「ロゼちゃん、ただいま!」 『おかえりゴシュジンサマ』  変わらず美しいロゼの姿に、琴乃の表情もゆるりとほどける。 『今日は誰と遊んできたのかしら?』 「みくちゃんと溝田さん!溝田さんは初めて話したんだけど、いい人だったよ。たくさんお話しして、今度一緒に遊ぶ約束したの」 『素敵じゃない、どこにいくの?』 「近所の遊園地!みくちゃんママが連れてってくれるの。バラ園があるすごいとこなんだよ」 『あらっ目移りしちゃ嫌よ』 「しないよ、絶対」  くすくす笑いあって、大きさの違う手のひらを合わせる。日に透けるオレンジは、今日も誰より輝かしい。 「ロゼちゃんが一番。誰より何より好きだよ」  その言葉に、ロゼはにっこりと笑った。  うちには、最高に綺麗なバラがいる。
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