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その後すぐに、背の高い男性が連れのもう一人の男性に告げた。
「ここにはいない。行くぞ。」
そして二人の男性は、出入口の方へと向かっていく。
今の状況をじっと見ていた貴志と叶恵。
立ち去っていく二人の男性を、叶恵はすぐに凝視した。
出入口の自動ドアが開くと、二人の男性は何事もなかったかのようにして出ていったのだ。
まだ、そのまま呆然と立ち尽くしている小太り店員の所に、美咲が現れて声をかける。
「あの、大丈夫ですか? 何かあったんですか?」
「あ、美咲ちゃん!」
そこでやっと正気を取り戻した小太り店員は、いつもの口調で答えた。
「あ、大丈夫だよ、美咲ちゃん。心配しないで。怪しい雰囲気の二人の男がいただろ。だから俺が、他のお客様の迷惑になるからって、追い払ったんだよ。」
腕組みをして話し続ける小太り店員。
「困ったもんだよ。時々、こんな問題が起こるんだよ。」
と話している隙に、いつの間にか、そこに美咲の姿はなく、貴志の所へと駆けて行っていた。
ふてくされた顔で仕事へと戻る小太り店員。
美咲が心配そうに、貴志に投げかけた。
「貴志〜、大丈夫?」
「あ、うん。俺も母さんも、別に大丈夫だ。」
そして美咲は、貴志の側にいた叶恵に挨拶する。
「あ、貴志くんのお母さん。こんばんは。」
「こんばんは、美咲ちゃん。久しぶりだね。」
叶恵も返事を返した。
店内を見回しながら、美咲が言う。
「まあ特に、店の中は問題なかったみたいで良かった。」
「美咲ちゃん自身は、大丈夫だったのか?」
貴志が心配して投げかけた。
「うん。私も大丈夫よ。」
いつもの笑顔で返す美咲。
貴志が真剣な表情に変わり、叶恵に問いかけた。
「母さん。あの二人、どんなヤツらか分かった?」
「・・・さっき見てみて、分かったよ。」
叶恵も、深刻な表情で答える。
「あの二人。何なんだよ。」
叶恵は浮かない顔で、一つ大きな溜息をつくと、ポツリと告げた。
「あの二人・・・・。刑事だよ。」
「刑事⁈ まさか。」
疑念の渦巻く中、貴志たちは立ち尽くすのだった。
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