ケース5️⃣ 前世宿縁

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その後すぐに、背の高い男性が連れのもう一人の男性に告げた。 「ここにはいない。行くぞ。」 そして二人の男性は、出入口の方へと向かっていく。 今の状況をじっと見ていた貴志と叶恵。 立ち去っていく二人の男性を、叶恵はすぐに凝視した。 出入口の自動ドアが開くと、二人の男性は何事もなかったかのようにして出ていったのだ。 まだ、そのまま呆然と立ち尽くしている小太り店員の所に、美咲が現れて声をかける。 「あの、大丈夫ですか? 何かあったんですか?」 「あ、美咲ちゃん!」 そこでやっと正気を取り戻した小太り店員は、いつもの口調で答えた。 「あ、大丈夫だよ、美咲ちゃん。心配しないで。怪しい雰囲気の二人の男がいただろ。だから俺が、他のお客様の迷惑になるからって、追い払ったんだよ。」 腕組みをして話し続ける小太り店員。 「困ったもんだよ。時々、こんな問題が起こるんだよ。」 と話している隙に、いつの間にか、そこに美咲の姿はなく、貴志の所へと駆けて行っていた。 ふてくされた顔で仕事へと戻る小太り店員。 美咲が心配そうに、貴志に投げかけた。 「貴志〜、大丈夫?」 「あ、うん。俺も母さんも、別に大丈夫だ。」 そして美咲は、貴志の側にいた叶恵に挨拶する。 「あ、貴志くんのお母さん。こんばんは。」 「こんばんは、美咲ちゃん。久しぶりだね。」 叶恵も返事を返した。 店内を見回しながら、美咲が言う。 「まあ特に、店の中は問題なかったみたいで良かった。」 「美咲ちゃん自身は、大丈夫だったのか?」 貴志が心配して投げかけた。 「うん。私も大丈夫よ。」 いつもの笑顔で返す美咲。 貴志が真剣な表情に変わり、叶恵に問いかけた。 「母さん。あの二人、どんなヤツらか分かった?」 「・・・さっき見てみて、分かったよ。」 叶恵も、深刻な表情で答える。 「あの二人。何なんだよ。」 叶恵は浮かない顔で、一つ大きな溜息をつくと、ポツリと告げた。 「あの二人・・・・。刑事だよ。」 「刑事⁈ まさか。」 疑念の渦巻く中、貴志たちは立ち尽くすのだった。
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