ケース5️⃣ 前世宿縁

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数日後の夜。 家の居間で、寝そべる貴志の姿があった。 時計は、20時を過ぎている。 台所から、叶恵が顔を出した。 「貴志。のんびりしているけど、今日はバイトないの?」 畳の上であくびをしながら、貴志が返事する。 「ないよ。休みだよ。この前みたいに、いきなりバイト先に、母さんが来るのも心配だしね。」 「私が行かなかったら、バイトをサボるのかい?」 叶恵が意地悪く言った。 「サボったりしないよ。だからもうバイト先には、来なくてイイから。」 「さあ〜、どうでしょうかねえ〜。それは、また次回のお楽しみ。ウフフ。」 叶恵はそう言って、台所へと消える。 「全く、そんなの楽しみじゃないから、やめてくれよ。」 貴志は不満げに言いながら、テレビのリモコンを手に取り電源を入れた。 30型程の大きさのテレビに番組が映る。 だらしそうにしながら、貴志は持ったリモコンで、ポチポチとチャンネルを変えていった。 「何か、面白い番組ないのか?」 今、映っている番組からナレーターの声が流れる。 「それでは、今日もいってみましょう〜。クイズ! 1000人の壁!」 パッと直ぐに、貴志がチャンネルを変えた。 テレビ画面では、どこかの地域で街を歩く人にカメラマンが話しかける。 「あの〜、すいません。タクシー代をこちらが支払いますので、一緒に職場についていってイイですか?」 「あ、俺、ニートだから。」 またパッと貴志がチャンネルを変えた。 深い山奥の細道を車がやっと登っていく映像が映る。 「衛星写真で見た、こんな山奥に、ドカンと大きな豪邸さん。見つけたいと思います〜!」 再び、パッと貴志がチャンネルを変える。 どこかの不動産屋が映り、そこで担当者と話す若い女性。 「では〜、家賃はいくらをご希望ですか?」 「そうねえ。じゃあ月150万円で。もちろん、エレベーター付きで。」 「幸せ! オークションガール!」 またまた貴志は、チャンネルを変えた。 「面白くない番組ばっかりだなあ。」
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