ケース5️⃣ 前世宿縁

12/76
前へ
/76ページ
次へ
その時、台所から叶恵が現れ、ちゃぶ台の上に食事を置く。 「夕食の牛丼。母さん、お風呂入ってくるからね。」 「ああ。」 貴志は、まだ寝転んだままの状態で返事した。叶恵は浴室へと消えていく。 ふと、その時テレビに映った番組は、どこかのスタジオらしく、画面には一人の司会の男性が映っていた。 「テレビの前のあなた! そうです、あなたです! 今夜あなたは、真実を目撃する!」 スーツ姿のその司会男性は、瞬きもせずに、こちらを見つめている。 深刻な表情で、間をおきながら語り続けてきた。 「あなたは、前世を信じますか?」 その問いかけに、少し興味を持ったのか、貴志は手に持っていたリモコンを側のちゃぶ台に置いて起き上がった。 テレビの中の司会者は話し続ける。 「果たして、前世はあるのか、ないのか?・・・もし前世があるとしたら。そんな世間では解明出来なかった前世の謎について、真実に迫りたいと思います。今夜は、数名の方々にスタジオへお越し頂きました。」 司会者が仰々《ぎょうぎょう》しく動きながら、スタジオ席を紹介した。 「本日、お呼びしたのは、・・・・まず、心霊やUFOを50年に渡って研究されてきたという、オカルト研究家の有馬《ありま》先生です!」 黒く腰の辺りにまで長い髪で、紫色のローブを纏《まと》った60歳代の女性が頭を下げた。会場に拍手が起こる。 更に、司会者が紹介を続けた。 「続きまして、進化論を長年研究されてきました、筑波大学の吉岡教授です!」 眼鏡をかけた白髪の60歳代の男性が、軽く頷く。また会場から拍手が起こった。 「そして、法医学を学ばれて、普段から犯罪捜査などにも携わっておられる、森先生に来て頂いています!」 痩せ型の30歳代の男性が、一礼をする。会場から拍手があった。 再び、司会者の熱弁が続く。 「本日はこの方々に、前世について討論して頂きたいと思います。」 すると、オカルト研究家の有馬という女性が口を開いた。 「最初に言っておきますが、前世は絶対にあります!」
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加