ケース5️⃣ 前世宿縁

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その日の夜。 時計は、もうすぐ9時になろうとしていた。 一人、台所で料理をしている叶恵。 すると、ガタガタと音を立てて居間の引き戸が開く。 「ただいま〜。」 疲れた表情で貴志が帰ってきた。 「お帰り。アルバイト、今日も大変だった?」 台所から叶恵が迎えてくれる。 「うん、疲れた。まあでも、今日は早く終われたほうだけどね。」 貴志が答えながら、居間のちゃぶ台の前に座った。 少しして、夕食をお盆に乗せた叶恵が、台所から現れる。 「はい。今日はカレー。」 「家の外まで、カレーの香りがしていたよ。」 そう言いながら、貴志はもうスプーンを握っていた。 台所へと戻りながら、叶恵が言う。 「あ、福神漬けも、そこにあるから。」 と、その時また引き戸が開いた。 「お! やっぱり今日はカレーか。」 そう言って入ってきたのは、修治である。 相変わらずスラリと高い背に、眼鏡をかけ、青白い細顔には、無精髭が生えていた。 久しぶりに見たその顔つきは、少し痩せこけたように感じるが、その口からは言いたい事だけ図々しく吐き捨てる。 「アンタ。二週間ぶりか、三週間ぶりか知らないけど、突然帰って来ても困るんだけど。」 台所から、叶恵が言った。 「カレーは、たくさんあるから良いだろ。あ、俺はやっぱりカレーには、らっきょうが良いな。」 貴志は、なるべく関わり合わないようにして、そのままカレーを食べ続ける。 少しして、ちゃぶ台の前に座って待つ修治にも、カレーが運ばれてきた。 「おお! このスパイシーな香り。ミトコンドリアも喜んでいる。」 修治が歓喜しながら話しているが、叶恵は聞こえないふりして、そのまま台所へと戻っていった。 そして、すぐにカレーを食べ終えた貴志が、叶恵に言う。 「カレー、おかわりある?」 「いいよ〜。」 すぐに台所から、返事が返ってきた。 貴志のもとに来た叶恵が、何かを持って来る。 「そういえば、貴志。今日、曽我部さん夫婦が午前中に来ていたよ。韓国旅行、楽しかったみたい。これは、そのお土産だって。」 差し出したのは、韓国キムチと、韓国海苔。そして美容クリームと、ハニーバターアーモンド、エゴマ油。 「曽我部さん。たくさんお土産くれたんだね。」 貴志が土産物を見ながら言う。
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