ケース5️⃣ 前世宿縁

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カレーを食べながら、修治も口を挟んできた。 「曽我部さん? 誰だ、それ? 韓国の人か?」 気にしている様子の修治に、叶恵が教える。 「曽我部さんは、昔私が働いていたレストランのオーナーさん。」 修治が少し考え込む仕草をした。 「レストラン? ん? ・・・ああ。あの峠にあった、潰れたレストランの事か。」 貴志が叶恵に尋ねる。 「曽我部夫婦、元気にしてた?」 「凄く、元気だった。気持ちが前向きになって、身体まで健康になったんじゃない?」 貴志も、それを聞いて嬉しそうに微笑んだ。 「そうか。良かった。」 横目でチラリと二人を見ながら、カレーを食べ続ける修治。 スッと立ち上がって、台所からカレーを注いで運んでくる叶恵。 「はい、貴志。おかわりね。」 その様子を見て、修治も言った。 「俺も、おかわり貰おうかなぁ。」 台所へと行きながら、叶恵が嫌味を言う。 「私の作ったカレーは高いですけど。」 修治が、愚痴を言い返した。 「な〜に言ってるんだ。カレーぐらい、300円で食べれるぞ。」 「じゃあ、300え〜ん。」 台所の方から、チラリと手を差し出して叶恵が返す。 「俺の給料を毎月手渡しているのに、まだ金を取るのか。」 苛立ちながら、修治が言った。 「あ、おかわりするなら、600円だね〜。」 それにも構わず、更に言い返す叶恵。 「そんなに言うなら、そこから自分で取れ!」 修治が黒革の長財布を取り出し、叶恵の足元へと投げる。 それを拾い、財布の中身を取り出す叶恵。 小銭入れの所から、ジャラジャラと溢れた。 「あ〜、300・・40・・3円しかない。」 「全部、持って行け〜!」 今夜も秋原家は、両雄《りょうゆう》がぶつかり合い、戦が始まりそうだ。 貴志は、巻き添えを喰らわないよう、カレーを食べるスピードを上げる。 そんな中、貴志はふと曽我部夫婦の事を思い出して、安堵の笑みを浮かべるのだった。
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