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ここは、スーパーエブリィ。
辺りは陽が落ちて薄暗くなっていた。
時刻は、17時過ぎ。
つい先程スーパーに到着した貴志が、ボルドー色の制服エプロンをつけて、店内に現れる。
「あ、やっと来た〜!」
業務に取り掛かろうとする貴志を、元気な声が捕まえた。
その主の方を見ると、腰に手を当てて立っている美咲の姿がある。
相変わらず、あどけなさはあるが、最近大人びてきた雰囲気の彼女は、薄く化粧をしており、同じボルドー色の制服エプロンの下は、膝丈のワンピースを着ていた。
「何で? 俺、別に遅刻してないし。」
貴志は、相手にしないといった素振りで、一言だけ返してさっさと歩いていこうとする。
それを逃さず、美咲が横に並んでくると、
「貴志に〜、聞きたい事があってさ。待ってたんだよ。」
唐突に投げかけてきた。
「聞きたい事?」
貴志は歩きながら、疑問な顔をする。
その足は忙しそうに、倉庫へと向かっていた。
しつこく付いてきた美咲が、貴志に尋ねる。
「ほら、もうすぐクリスマスでしょ? その日、何してるかなあ、と思って。」
「何してるって。24と25だろ。その日が何曜日か分からないけど・・・・。」
美咲が喰らいつくようにして言った。
「24日が木曜日で、25日が金曜日ですぅ〜。」
貴志は呆れた顔で一つ溜息をつくと、台車を取り出す。
「・・じゃあ、その日も学校か、バイトだろ?」
「貴志って、本当楽しみがないよねえ〜。彼女もいないし。」
美咲が、ニッコリ意地悪そうに笑った。
「あのさ、俺をからかうつもりなら、忙しいんだから、向こうに行ってくれよ。」
貴志が台車を押しながら、不機嫌になる。
すぐに、美咲が追いかけてきて横に並んだ。
「まあまあ。そんなに絶望しないで。楽しみっていうのは自分たちで作らないと。学校とバイトだけじゃ、つまらないでしょ。」
「何があるんだよ。」
貴志は美咲の方を見ないで、押してきた台車を止め、段ボールに入った商品を乗せはじめる。
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