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肌寒い風が吹く、昼前の街通り。
空は、ハッキリしない曇り空で覆われていた。
歩道で立ち止まり、携帯電話の画面を素早く指で操作している、一人の男性。
170cm程の身長に、中肉中背の体型。
画面の上を忙しく動かす人差し指には、リングがはめられていた。
首にかけられたベッドフォンを、もう片方の手で扱う。
「今日は、どこの占い屋に行ってみようかな。」
その男性は、そんな事を独り言で呟いた。
羽織ったトレンチコートの中から、supremeと書かれた上着の文字が見えている。
ふと男性が、被っていた緑色のキャップを脱ぐと、金髪が現れ片手で頭を掻いた。
男性は、あの綿星 淳一である。
彼はまた、何かを思いついたように歩きだした。
そして住宅地のある通路を歩いていると、前方の道路脇で座り込んでいる女性らしき人物に気がつく。
その方向へと、ゆっくりと近づくにつれ、それが金髪の女性である事が分かってきた。
どうしたのかと思いながら、ゆっくりと近づき、声をかける綿星。
「あのう、どうかしたのかな?」
その声掛けに、座り込んでいた女性が顔を上げた。
その人物を見て綿星は、ハッと息を呑み、呼吸が止まる。
金髪と思っていた女性は、ブロンドの背中まで伸びた長い髪で、毛先にはソバージュがかかっていた。
そして綿星の方を見つめる瞳は、透き通ったブルーで、長いまつ毛と大きな目が、一瞬にして虜《とりこ》にしてしまう。
綿星は、その清楚な美しい女性が、外国人である事が分かった。
予期せぬ出来事と、今まで見た事もない綺麗な女性に言葉を失い、綿星は全身から血が引き、鼓動だけが激しく脈打つのを感じる。
そこで勢いをだして、とりあえず、
「オー、・・あ〜。ハロー・・。イエス。あ〜・・と。グッドモーニング。」
と投げかけてみた。
長いスカートのまま座り込んでいる女性は、じっと見返した状態である。
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