ケース5️⃣ 前世宿縁

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肌寒い風が吹く、昼前の街通り。 空は、ハッキリしない曇り空で覆われていた。 歩道で立ち止まり、携帯電話の画面を素早く指で操作している、一人の男性。 170cm程の身長に、中肉中背の体型。 画面の上を忙しく動かす人差し指には、リングがはめられていた。 首にかけられたベッドフォンを、もう片方の手で扱う。 「今日は、どこの占い屋に行ってみようかな。」 その男性は、そんな事を独り言で呟いた。 羽織ったトレンチコートの中から、supremeと書かれた上着の文字が見えている。 ふと男性が、被っていた緑色のキャップを脱ぐと、金髪が現れ片手で頭を掻いた。 男性は、あの綿星 淳一である。 彼はまた、何かを思いついたように歩きだした。 そして住宅地のある通路を歩いていると、前方の道路脇で座り込んでいる女性らしき人物に気がつく。 その方向へと、ゆっくりと近づくにつれ、それが金髪の女性である事が分かってきた。 どうしたのかと思いながら、ゆっくりと近づき、声をかける綿星。 「あのう、どうかしたのかな?」 その声掛けに、座り込んでいた女性が顔を上げた。 その人物を見て綿星は、ハッと息を呑み、呼吸が止まる。 金髪と思っていた女性は、ブロンドの背中まで伸びた長い髪で、毛先にはソバージュがかかっていた。 そして綿星の方を見つめる瞳は、透き通ったブルーで、長いまつ毛と大きな目が、一瞬にして虜《とりこ》にしてしまう。 綿星は、その清楚な美しい女性が、外国人である事が分かった。 予期せぬ出来事と、今まで見た事もない綺麗な女性に言葉を失い、綿星は全身から血が引き、鼓動だけが激しく脈打つのを感じる。 そこで勢いをだして、とりあえず、 「オー、・・あ〜。ハロー・・。イエス。あ〜・・と。グッドモーニング。」 と投げかけてみた。 長いスカートのまま座り込んでいる女性は、じっと見返した状態である。
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