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綿星は咄嗟に、自分の話した英語が通じなかったのだと思い、再び言い直した。
「オー、ベイビー・・。あ〜、イングリッシュ? ベリーベリー、グッド。あ〜、マイ、ジャパン!」
「ワタシ、日本語、話せマ〜ス。」
そう言って、女性はスッくと立ち上がる。
その時、焦っていた綿星は、更に驚愕した。
目の前で立ち上がった女性は、綿星よりも背が高く、その体型は見事な9頭身程のスレンダーだったのだ。
色々な困惑と、幻惑の美しさに思考が麻痺して、綿星は静止した状態になっている。
そしてなんとか我にかえると、女性を見上げながら応対した。
「ああ良かった。日本語が話せるなら。」
綿星がそう言うと、そのままでも美しい女性はニコッと笑いかけ、まるで華が咲き誇ったかのように魅了する。
「ありがとうございマスゥ。」
「ハハ・・。いやぁ〜本当に良かった。俺も英語が出来ないわけじゃないんだけど。日本語の方が、細かく伝わるから。」
ここの辺りは、あまり人通りが少なく、時々老人や自転車に乗った人が行き交うだけであった。
綿星は、緊張高ぶる自分を押し殺し、沈黙してしまわないように振る舞う。
「あ、あの座り込んでたみたいだけど、大丈夫?」
すると女性は、白いパンプスを履いた自分の足元を見ながら答えた。
「歩いていたら、つまずいて・・。少し足を痛めたんデスゥ。でももう、大丈夫デス。歩けマス。」
「そ、そうか。良かった。」
心配そうに、綿星が言う。
「アナタ。優しい男性ですネ。」
女性は、また笑顔を向けた。
「あ、いや、優しいっていうか。当たり前の事をしただけで・・。まあ、いつも優しいって言われるんだけど。ハハ。」
綿星は照れ笑いしながら、嬉しそうに話す。
それに対して、女性も笑顔で返した。
「アナタ。今、一人? 占いは好きですか?」
その言葉に、綿星の気分は最高潮に高まり、声が裏返りながら調子良く答える。
「おお! 俺、占い大大大好き! しかも、一人〜! 大丈夫! 彼女いな〜い!」
女性も嬉しそうに、微笑み返した。
「アナタ、優しいし、占い大好きね。特別に案内するわ。」
「おお! 特別に⁈ 行こう! 行こう!」
すると女性が先導しながら、綿星を通路へと誘導する。
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