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女性のすぐ後ろを付いて歩く綿星に、甘い華のような良い匂いが包み込んでくる。
歩きながら綿星が尋ねた。
「ねえ、君〜名前は?」
女性はチラッと振り返って返答する。
「私は、メグ。メグ・マーチン、デス。アナタは?」
「俺は、淳一。綿星 淳一だ。」
二人は歩き続けた。
綿星は後を追いながら、手でガッツポーズをし、一人呟く。
「メグちゃんか〜。メチャクチャ綺麗じゃないか〜。確か、どこかの占い師が、『もうすぐ劇的な女性と出逢える』って言ってたけど、まさか今日だったとはな〜。やっぱり出逢いって突然なんだな〜。」
その時、ふと振り返ってくるメグ。
綿星は、それに笑顔を返した。
「ここデス。」
そう言って辿り着いた所は、しばらく歩き裏通りに入っていった所の古い建物だった。
古い小さな家が立ち並ぶ、その一つの前に立つ。
玄関らしき入口は、レンガ色の鉄の扉でできていた。
メグがその扉を開けると、先に中に入りながら、声をかけてくる。
「どうぞ。ついてきて。」
綿星は、この異様な雰囲気の建物に怪しさを感じたが、なんの躊躇もなく入っていくメグの姿を見て、気を取り直した。
「まあ、本格的な占いの館って感じだよな。」
そして綿星は、どこか気まずそうに辺りを見回してから、意を決して中へと入っていく。
中に入ると扉が閉まった。
辺りは薄暗く、壁に挟まれた通路が真っ直ぐ伸びている。
数歩進むと、すぐに下へと下りる階段が出てきた。
メグはもう、その暗い階段を下りている。
綿星も、遅れまいと暗い階段を進んでいった。
その階段を、20段程下りていった所で、メグが待っている。
そこは行き止まりで、二人の目の前に、また鉄の扉があった。
メグがその扉を開け、中へと入っていく。
綿星は、メグに身を預ける気持ちで、臆する気持ちを抑え、中へと続いた。
入った部屋は、やはり薄暗かったが、幾つかのランプが壁や台の上に置かれていた為、中を見渡す事が出来た。
「うわ〜、凄い部屋。」
綿星は、思わず声を発する。
この部屋は見た感じ、20畳程の広さで、奥側に小さなテーブルと椅子が見えた。
地下の位置になる為、少し温度が下がった感じがする事と、湿気臭い。
壁は無機質で、何の飾りもなく、左右にそれぞれランプが灯されているだけだった。
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