ケース5️⃣ 前世宿縁

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二人の男性が、店内の奥のコーナーへ移動した事を確認してから、叶恵が貴志に囁く。 「今の二人。最近、店にも来て、タコ焼きを買っていったんだよ。異様な雰囲気があるだろ。」 「確かに。何か怪しい感じがするね。」 貴志も、チラリと横目で見張る。 そして、やや緊張した面持ちで、貴志が言った。 「あの二人が側を通り過ぎていく時、見た?」 「見たって、私はなるべく目が合わないように逸らしていたけど。」 叶恵が、小声で返す。 貴志の顔色が、少し悪いように感じる。 「あの大きい方の男性・・・。側を通った時、俺よりも背が高かったよ。」 「え? ・・やっぱり。確かに大きいもんね。」 叶恵が薄目をしながら、さりげなく確認した。 二人の男性は、辺りを見回しながら一通り店内を歩いて回る。 その様子を、遠くから気が付かれないように観察している貴志と叶恵。 「・・何かを探しているみたいね。」 「誰かを探してるのかな?」 そのうち、背の高い方の男性が、通路で出くわした小太り店員とぶつかってしまった。 背の高い男性は何事もなかったかのように立っているが、小太り店員はぶつかった勢いで、3〜4メートル程も弾き飛ぶ。 「あ、痛てて・・・。」 小太り店員は、必死に打撲した腕を押さえた。 その様子を見ていた背の高い男性が、声をかける。 「大丈夫か、坊や。」 そう言われて、気が付いた小太り店員は、その場に倒れたまま口をポカンと開けていた。 そのうち、まるで大木の幹のような逞しい《たくま》腕を、背の高い男性が伸ばしてくる。 丸っぽい小太り店員の手が差し出されると、全身の身体ごと持ち上げられる勢いで、引っ張り起こされた。 「ぐわわっ!」 その場にポツンと立った小太り店員は、改めて目の前に立つ、背の高い男性を見上げて、思わず後退り《あとずさ》する。 「あぁっ、許してください!」 必死に目を閉じたまま何故か、謝る小太り店員。 すると背の高い男性が、小太り店員の頭を軽く撫でるように摩り《さす》ながら言う。 「気をつけるんだぞ、坊や。」 「は、はい。」 鼻水まで流して返答する小太り店員。
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