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二人の男性が、店内の奥のコーナーへ移動した事を確認してから、叶恵が貴志に囁く。
「今の二人。最近、店にも来て、タコ焼きを買っていったんだよ。異様な雰囲気があるだろ。」
「確かに。何か怪しい感じがするね。」
貴志も、チラリと横目で見張る。
そして、やや緊張した面持ちで、貴志が言った。
「あの二人が側を通り過ぎていく時、見た?」
「見たって、私はなるべく目が合わないように逸らしていたけど。」
叶恵が、小声で返す。
貴志の顔色が、少し悪いように感じる。
「あの大きい方の男性・・・。側を通った時、俺よりも背が高かったよ。」
「え? ・・やっぱり。確かに大きいもんね。」
叶恵が薄目をしながら、さりげなく確認した。
二人の男性は、辺りを見回しながら一通り店内を歩いて回る。
その様子を、遠くから気が付かれないように観察している貴志と叶恵。
「・・何かを探しているみたいね。」
「誰かを探してるのかな?」
そのうち、背の高い方の男性が、通路で出くわした小太り店員とぶつかってしまった。
背の高い男性は何事もなかったかのように立っているが、小太り店員はぶつかった勢いで、3〜4メートル程も弾き飛ぶ。
「あ、痛てて・・・。」
小太り店員は、必死に打撲した腕を押さえた。
その様子を見ていた背の高い男性が、声をかける。
「大丈夫か、坊や。」
そう言われて、気が付いた小太り店員は、その場に倒れたまま口をポカンと開けていた。
そのうち、まるで大木の幹のような逞しい《たくま》腕を、背の高い男性が伸ばしてくる。
丸っぽい小太り店員の手が差し出されると、全身の身体ごと持ち上げられる勢いで、引っ張り起こされた。
「ぐわわっ!」
その場にポツンと立った小太り店員は、改めて目の前に立つ、背の高い男性を見上げて、思わず後退り《あとずさ》する。
「あぁっ、許してください!」
必死に目を閉じたまま何故か、謝る小太り店員。
すると背の高い男性が、小太り店員の頭を軽く撫でるように摩り《さす》ながら言う。
「気をつけるんだぞ、坊や。」
「は、はい。」
鼻水まで流して返答する小太り店員。
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