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ケース5️⃣ 前世宿縁
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
師走の月に、街には冷たい風が吹き込んでいた。
街並みの木々は、ほっそりと裸の状態になり、足元の落ち葉は風と踊る。
スッキリしない曇り空の下、タコ焼きハウス・エリーゼからは賑やかな声が聞こえていた。
「えっ〜〜〜〜‼︎ それ、本当ですかぁ⁈」
若い女性が叫ぶ。
店内のカウンターに二人の女性が座り、空になった皿が目の前に並んでいた。
時計は、15時20分。
「本当だよ。間違いないね。」
叶恵が、たこ焼き鉄板台の前に立ち、悟ったような顔で告げる。
二人の女性は20代ぐらいで、そのうちの一人が、カウンターに顔を俯した。
「最悪〜。どうしよ〜。」
叶恵の得意げな表情は直らない。
「だって、あなたのその彼氏、もうすぐ海外に行っちゃうよ。」
もう一人の女性が、慰めるように言う。
「やっぱり、騙されていたんじゃないの。今のうちに別れなさいよ。」
「だって〜。今年中には結婚しようかと思ってたんだよ〜。」
カウンターから顔を上げて、悔しい表情で訴えた。
「まあ、あなたはその予定でも、向こうには全くそんな気はないよ。」
叶恵が、厳しい口調で伝える。
女性は、苦悩の声で話し続けた。
「酷いよ〜。一年も付き合ったのに〜。」
「え⁈ たった一年だったの?」
もう一人の女性が鋭く突っ込む。
女性はまた、カウンターに顔をうつ伏せてしまった。
すると叶恵は、もう一人の女性に告げる。
「あなたはね。今の職場を半年のうちに辞めないと、給料減額されてしまう、ね。」
「え⁈ それ、本当ですか⁈」
女性が必死の顔で聞き返した。
叶恵が、嫌味な顔になる。
「だって、今勤めてる会社。経営がヤバくなってるから。」
女性は、食い下がるように叶恵に訴えた。
「そんなあ。ここまで頑張って働いてきたのに・・。」
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