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夕食時、キッチンで一緒に食事をとろうとせず、自分の部屋に籠っている純子に井原はドア越しに言った。
「わ、悪かった。純子。勘当は取り消す。そして徳大寺との結婚を許す」
すると、「ほんとに!」と純子が即座に歓声を上げた。
「ああ、ほんとだ。だから一緒に食事しよう」
「分かったわ!」と純子は答えると、鍵を解いて笑顔で部屋から出て来た。
井原は妻と離婚した上、純子と縁を切ったのでは寂しくなるばかりだから仕方なく彼女を許すことにしたのだ。
一緒に夕食を取ることになったものの何か自分に釈然としないものを感ぜざるを得なかった井原は、純子と会話が弾む筈がなく気まずい雰囲気に苛まれた。
その晩、井原は気まずさを吹き飛ばしたいこともあり思い切って純子に一緒に風呂に入ろうと誘ったが、それは流石に駄目で益々気まずい思いをした。
「あのねえ、パパ、私はもう徳大寺さんだけのものなの。況して私たちは親子なのよ。徳大寺さんに言われて私、パパとの関係がほんとに異常だったことが分かったわ。だから好い加減にしてよ」
「そ、そうだな。わ、分かった」と井原は渋々諦めた。確かに純子の言う通りで、それは風呂云々に限ったことではなかった。「まあ、こうなったらソープにでも行くしかないか」
「そうね。それかパートナーを作るしかないわね」
「ああ・・・」異常な欲望を押さえるには確かにそうなのだ。実は井原は純子と風呂に入れたならあわよくば交わろうと本気で思っていたのだから。「嗚呼、何ということだ!」
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