9.溢れる幸せ

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9.溢れる幸せ

 ここ数日間続いていた朝の異変は、これが原因だったのかと、男は知ることになった。 「あなたは最近。ある人に、演劇の脚本を書くよう、依頼されましたね?」  その話には、身に覚えがある。 「その方は私の、とても大切な人なのです」  狐乃音は表情も口調も、あくまでも穏やかだった。男の非を咎めるような、とげとげしさは感じない。  ただ一言。はっきりと言い切った 「約束の報酬を、支払っていただきたいのです」  ここでもし、嫌だと言ったらどうなるのか?  男は思ったが、狐乃音は想定済み。 「支払っていただけないのであれば、仕方がありません。実力行使……もとい、もふもふレベルを更に上げるしかありませんね」 「う……」  そんなことをされたら……。男は僅かに呻いた。 「気持ちよすぎて、ますます起きられなくなっちゃいますね」  脳内に分泌される幸せホルモンが、だだ漏れになりそう。そんなイメージを、男は抱いた。  けれど……。 「それだけなのか?」 「はい。それだけです」  とろとろの眠りが毎日のように続く……。  朝が大変なことになりそうだ。
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