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2.ドレスを着よう!
「ねえ狐乃音ちゃん。明後日ね。ドレス着て、写真を撮ってみない?」
「うきゅ?」
お兄さんの提案に、狐乃音はきょとんとしてしまう。
「あれ? 前に、ドレスを着てみたいって言ってなかったっけ?」
「あ、はい。言ったこと、ありました」
突然のことに、狐乃音は戸惑った。
狐乃音はいつも、紅白が鮮やかな巫女装束という、和装に身を包んでいるけれど。ドレスのような洋装も、大好きなのだった。
「近くに写真のスタジオがあるんだけど。どうかなーって思ってね。ドレス、着てみたくない?」
「着てみたいです。でも……。それって、お金がかかるんじゃないですか?」
「そんなでもなかったりするよ。じゃ、行ってみようよ」
「い、いいのですか?」
「もちろん。あ、お耳と尻尾は、隠してもらうことになっちゃうけど」
そんなのは、些細なことだ。
「うきゅ~。ドレス……。ですかあ。ふふふ」
どんなのがあるんだろう? ものすごく楽しみだ。
フリルたっぷり。リボンをあしらって、最高に可愛いドレス。
「参考までに、これを見ておくといいよ」
「ありがとうございます」
お兄さんから渡されたのは、スタジオのパンフレットだ。
「わあ。すごく可愛いです……」
子供のモデルさんが、貸衣装を着ては、カメラに向かって微笑んでいる。
色はどうしようかな? 赤青黄色。水色や緑もいいし、オレンジとか紫だって悪くないし。ああでも。女子たるもの、定番のヒロインカラーとも言えるピンクもいいし……。
狐乃音は夢中でパンフレットをめくり続けた。気分はまるで、遠足の前日のよう。
「迷っちゃいます~!」
明後日が待ちきれなくなっていた。
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