3.歌を歌う!

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3.歌を歌う!

「も~。沙弥ちゃんのエッチ!」  被害者の智夏さんは、両腕で胸元をもぞもぞさせながら、沙弥に抗議していた。いたずら者な沙弥のおかげで、服の中でちょっと下着がズレたっぽい。まったく迷惑な話だ。 「どうもすみませんでした、はい」 「まったく。油断も隙もないわね」  緒美は穏やかに呟いた。ぷんぷんした智夏も可愛いわねとか、思いながら。  ――放課後。いつものように、仲良し四人組で沙弥の部屋に集まっていたのだけれど、沙弥は唐突に言ったものだ。  今度、学年全体で、校外ボランティア活動をするとのこと。  そんなわけなので、沙弥と明穂は学校近くの保育園に出向くことになったのだとか。  で。小さな子供達の前で、何かちょっとした出し物をしてみようということになったらしい。 「やり直しだね、沙弥」 「あい……」  そんな中で、沙弥と明穂は二人で話しあった。その結果、ちょっとした漫才をしてみたらどうかということになったそうな。  で、折角ネタを書いて披露してみたものの、みんなの評判はあんまりよろしくなかった。がっかり。  でも、沙弥はめげない。 「だったら、歌でも歌ってみたらどうかしら? 沙弥、上手そうだし。アイドル志望なんでしょ?」  緒美がさらりと言う。  そう。沙弥の夢は、みんなに愛と希望を届ける素敵なアイドルなのだ。冗談で言っているようだけれど、気持ちは本当。ガチなのだった。  何せこの家には、防音を施してヒトカラもできるような部屋があったりするから、沙弥はそこでしょっちゅうボイストレーニングや、ダンスの練習を行ったりしているのだった。とても恵まれた贅沢な環境だったが。それもこれも、娘を溺愛する両親の計らいなのだ。 「お! 歌ですね? 歌っちゃいます!? 一曲いっちゃいますか! いいっすよー!」 「ほい沙弥。マイクだよん」  実にいいタイミングで、沙弥にマイクを手渡す明穂。 「あんがと明穂! んじゃ、あたしの歌を聴け~~~~~い! へいへ~~~~い!」  そんなこんなで、急遽沙弥はカラオケ用のマイクを握りしめ、お気に入りソングを歌い始めるのだった。
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